008

ラズリルの夜は大通りでも街灯が少なく、ひっそりと静まり返っていた。本国では、どこでも篝火が煌々と焚かれ、夜でも町は赤く照らされて賑やかだったため、キナには静かな夜というものが新鮮だった。

「本国のドレスかい?きれいだな。君に良く似合っているよ。」

スノウは慣れた調子でそんな言葉を続けていた。この手の社交辞令を聞くことには、キナもそれなりに慣れていた。

「ありがとうございます。」

そつなくキナが答えると、スノウはちょっと顔を赤くして照れ臭そうに、本心だよ、と呟いた。キナは曖昧に微笑んだ。


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