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2年B組 御幸一也先輩へ♡

去年から試合に出ている先輩をずっと見てました…。
先輩はカッコ良くて私の憧れの存在です♡
ずっとずっと大好きです!
今日のお昼休みに校舎裏へ来てください!
お願いします♡

1年D組 相田真莉愛♡

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知らない後輩からのラブレター…。今朝靴箱に入っていた。
こういう手紙をもらうのは初めてじゃない。今朝一緒に登校した倉持には早速バレて、というか、倉持も見ている前で靴箱から手紙が落ちて、さんざんからかわれ恨み言を言われて、今日の夜早速寮でイジられるんだろうなと憂鬱になりながら、俺は手紙を握りしめて校舎裏に来た。
まだ誰もいない。昼食を気持ち急いで食べてから来たから、昼休みは残り15分くらい。まあ、会えなければそれはそれでいいし…。

今は野球に集中したいから。
他のことを考える余裕がないから。
君のことをよく知らないから。

断る台詞はいつも大体同じ。それでもまた、練習するように心の中で繰り返して、深呼吸した。
相田真莉愛…。どんな子だろう。可愛いのかな。いや、でも、付き合わないけど。
…長澤ちゃんに似てたらちょっと考えるかも。

――さく、さく、と砂利を踏んで歩いて来る軽い足音がして、俺は振り返った。
そして…息をのんだ。


1年の赤い上靴…。やって来たのは、とんでもなく可愛い女子生徒だった。
ぱっちりした瞳と亜麻色のふわふわツヤツヤした長い髪、薔薇色の頬にバラ色の唇、ツンとした小さな鼻。モデルのようにバランスの整った、すらりとした華奢なスタイルと小顔。奇跡だ。ここまで頭の先からつま先まで綺麗だなんて、すげぇ奇跡。

その奇跡のような女の子は、丸い瞳を瞬いて、じっと俺の顔を見つめた。それだけで勝手に顔が熱くなる。
…っていうか…この子が相田真莉愛!?まさかこんな美人だったなんて…。

「……。」

相田は確かめるようにちらりと視線を動かして、俺の顔からつま先までを見て、また顔を見上げた。その様子を不思議に思う余裕は今の俺にはなく、呼び出した相田が口を開くのを待っていたけど、やがて耐え切れずに俺から切り出した。

「……えっと」
「……。」
「…手紙のことだけど」
「あ…はい」

短い声に、心臓がドキンとした。この子…声まで綺麗だ。完璧美女か!?ちくしょう、なんか悔しい。

「まあ…お互い良く知らないわけだし」
「……。」
「今は俺…野球のことで頭いっぱいで、正直誰かと付き合う余裕がないっていうか…」
「……え?」
「え?」

相田は少し呆れたような釈然としない顔で俺を睨んでいた。え、なんでそうなる?はっきりイエスかノーで答えろってことか?

「じゃあなんで呼び出したんですか?」

眉を顰め、俺をまっすぐに見つめて相田は言った。
…ん?なんかおかしい…

「え?呼び出し?」
「手紙で…」
「手紙?」
「…これです」

相田はスカートのポケットから紙きれを取り出した。そこでハッとして、俺をまじまじと見つめた。俺もほとんど同時に、おそらく同じことに気が付いて、その子の顔を見つめ返した。

「…ごめん…名前は?」
「…花城光です」

…人違い…!!
俺の顔を見て花城も理解した様子で手紙を仕舞った。

「勘違いだな…悪い。俺は御幸一也」
「…はい」
「……。」
「……。」

お互いに何となく気まずくなって沈黙した、その時。
俺の視界の端っこを小さな影が横切り、ぞっとした直後、目の前の花城の腕に深紅の粒のようなテントウムシが止まった。

「……っひゃ…!!」

花城が驚いて、慌てて手を振り払った。それでもテントウムシは花城の制服の袖にしがみつき、なかなか飛んでいかない。

「ぷっ…はっはっはっは!」
「わ、笑ってないで助けて!やだ!」
「いや、俺も虫無理」
「バカ!!」
「はっはっはっはっは!バカ…バカって…ブッククク」
「さ…最低!!」

花城が意を決してもう片方の手で払いのけると、テントウムシはやっと飛び去って行った。花城の顔はすっかり青ざめ、だけど頬は赤く紅潮して耳まで真っ赤になっていて、潤んだ目で非難がましく俺を睨んだ。『よくも笑いやがって』と顔に書いてある。

「誰にでも苦手はモンはある。」
「男のくせに…」
「男が全員虫に触れると思うなよ。」
「……。」
「つーか慌てすぎ…プククク、カワイ〜♡」
「う…うるさい!バカ!」

花城は怒った様子で踵を返し、去っていこうとした。

「あ、おい手紙どうすんの?」
「もうすぐ休み時間終わるもん!」
「何怒ってんだよ。」
「うるさい!ついてこないで!」



***



「み〜〜〜ゆ〜〜〜き〜〜〜〜〜」
「……。」


きた…。
夕食のあと、倉持が早速告げ口をしたのか、純さんや亮さんたちが俺を取り囲んだ。

「ども…お疲れ様です…」
「ゴルァ待て御幸ィ!!話がある」
「何でしょうか…」
「テメェ1年の花城光ちゃんと付き合ってるってのはマジなのか!?オイ!!」
「……はい?」

脳裏に浮かんだのは今日あった1年の女子…花城の顔。
いやあとんでもない美女だった。というのはおいといて、なんでそんな話になってるんだ?

「いや知りませんけど…何ですかそれ?」
「アァ!?んだよデマかよ!」
「なーんだ…つまんないな」
「いやいやちょっと待ってくださいよ。誰が言ってたんですか?」

早々に散ろうとした純さんたちを、今度は俺が呼び止めた。

「あ?誰って…」
「もう噂になってるよ。」
「噂?」

目を瞬いた俺に、亮さんはにやりと笑う。

「うん。学校中でね。」
「…え!?」
「少なくとも3年には知れ渡ってるよ。」

俺は2年であっちは1年…なのにもう3年に知れ渡ってるって、じゃあ1年も2年も噂が広まってるってこと…?
つい数時間前に、おそらく誰にも見られていない場所で初めて会ったばかりなのに!?

「まー相手は花城さんだからね。」

俺の混乱を見透かしたように亮さんが言った。

「え?アイツなんか有名なんですか?」
「何言ってんの?今年の1年にめちゃくちゃカワイイ子がいるって噂になってるだろ。つーか御幸は知り合いなの?」
「いや…今日初めて知りましたけど…」
「ふーん?」

亮さんと純さんはニヤニヤして顔を見合わせた。

「丹波が泣くね。」
「え?」
「まぁしょーがねぇ、あの頭じゃ…」
「ちょっと、それがあいつのチャームポイントだぞ。」
「ブハハハw」
「……。」

何か二人で盛り上がってるし…。
しかし話を聞く限り…丹波さんは花城に気があるってことか…?

「じゃあお前は花城さんと付き合ってはないんだ?」
「えぇ…まぁ…」
「じゃあもうお前に用はないよ。忙しいからおしゃべりはもう終わりな。」
「え…えぇ?」
「室内練習場行こうぜぇ」
「先に豆乳買っていい?」
「……。」

亮さんと純さんは俺を置いて行ってしまった。
なんだったんだ…絡むだけ絡んでおいて…。



***



「うわ…」

翌日、学校の自販機の前で花城とばったり会った。花城は俺と目が合うと、急に顔を顰めてそう言った。

「コラコラ、何だその嫌そーな顔は!」
「やめてください」

小突くふりをした俺の手をひらりとかわす花城。もともと触れる気はなかった俺の手は簡単に空を切った。
隣で倉持はわなわなと俺と花城を見ている。「お前こんな可愛い女子といつどこでどうやって知り合ったんだよ」とテレパシーで伝わってきそうだ。というか、きている。
花城の方は花城の方で、友達っぽいショートヘアのボーイッシュな女子が面白がるように笑って俺たちを見て、誰?と聞いている。

「…昨日の…。」
「…あ〜!あの先輩?」

昨日の出来事を話してあったのか、花城が頷くと、友達は興味深そうに俺を見てきた。

「え〜イケメンじゃん!」

直球な言葉だったが、飾らないさっぱりとした言い方だったため、照れくさく思うことはなかった。それよりも、その言葉を聞いて顔を赤らめた花城を見て、ドキリとした。

「えぇ〜…?」

花城は赤くなった顔を嫌そうに顰めて目を背けた。照れてる。わかりやすく照れてる…。
てことは花城、実はちょっと俺に気がある…!?こんな美女が!マジ?

「おう御幸ィ…知り合いか?どういう関係だ?」
「倉持クン痛い…」

さっきのイケメン発言も手伝って超不機嫌な倉持が肩を組んできた…と見せかけてさりげなく関節を締めながら凄んできた。

「昨日偶然知り合った花城。」

手で花城を指して言うと、倉持は満足そうに俺を解放した。

「あ…ども!俺倉持って言います!へへ…」
「…どうも」

誰?と花城の目が俺に尋ねる。俺は笑って流した。余計なこと言うと後で倉持に蹴られそうだし。

「友達?」
「親友でーす!鷹野です!」

花城の友達に軽く尋ねると、思っていたより高いテンションが返ってきた。なんか、花城とは正反対のタイプで面白い。

――ピッ、ガコン。

花城が俺たちをよそに一人でお茶を買った。マイペースな奴。

「話の途中でお茶買いに行くなよ(笑)」
「御幸先輩と話に来たんじゃないんです。お茶買いに来たんです。」

花城は、ふん、とそっぽを向いてそう言って、鷹野の腕を掴んだ。

「行こ!司。」
「え〜いいの?」
「いいの!」

なんだかすっかり嫌われてしまったようだ。でもちょっと仲良くなれてる気もして嬉しい。

「オイコラ御幸!!花城さんといつどうやって知り合ったんだよ!!」
「痛い痛い痛い…」

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