020
2学期が始まって花城をやっと見かけたのは、雨の日の放課後だった。
「御幸ー、どうする?」
今日はこの雨で練習は休み。こういう日は倉持やほかのメンバーと遊びに出かけたりもするのだが…。
…花城が暇だったら…。って、いやいや、誘えるわけねーって。何考えてんだ俺。
「おいって。ノリたちは駅前行くらしいぜ」
「あー、どっちでもいいよ」
「ア?んだそれ…別に来ねえならそれでいーっつの」
「……。」
まあ…どうせ寮に帰っても暇だし、沢村は鬱陶しいし…
「行こうかな〜…」
「めんどくせえ。最初から素直になれよクソ眼鏡」
倉持にどつかれながら、ほかのクラスの奴らと待ち合わせるため昇降口に向かって、階段を下りた先にいた人の姿に俺は心臓がはねた。
花城…。と、…速水。
今まさに、靴を履き替えて、一緒に昇降口を出るところ…。
…え?一緒に帰るのか?それとも、一緒にどこか行く…とか。え、でも、なんで?
「ねえあれ、速水先輩と花城さんじゃない?」
「え!?あの二人付き合ってるの?」
二人の姿を見た周りの生徒たちも騒いでいる。速水はサッカー部のエースであの通りのイケメンだから女子人気が高いし、花城もあの美貌で学校中の有名人だから目立つのだ。
「そうなんじゃない?」
「お似合い〜」
「っていうか、眼福〜」
「美男美女だよね〜」
噂話をする女子生徒たちはそう盛り上がっている。
俺も倉持もあほみたいに突っ立って、そのうわさ話を聞きながら、二人が並んで帰っていく姿を眺めていることしかできなかった。
傘を開く花城の隣で、速水がスポーツバッグの中を漁って、慌てた様子で何かを言う。花城は赤い顔ではにかんで、差していた傘を少し高く持ち上げて、速水の背丈の高さに合わせた。速水はその柄を受け取って、傘の中に入る。
相合傘…だなんて。…見たくなかった。
きゃーっ!と、すぐそばの女子生徒たちはまるで恋愛ドラマでも見ているように勝手に盛り上がっている。
やばい。もう、うかうかしていられない。
このままじゃ、速水に奪われる。
俺は無意識のうちに、強く拳を握り締めていた。
***