008

玉城さんは俺に気がある……、……はず、だよな?

「東条これは?」
「いいね。やっぱり玉城とは気が合うなぁ。」
「これね、デビュー曲なの。発表したとき、まだ14歳だったんだって。」
「へぇー!すごい!さっきの曲もよかったけど…こういうバラード系もいいよね。」

「……。」
「……。」

休み時間に見かけた玉城さんと東条は、窓際に二人で並び、一つのミュージックプレーヤーにつないだイヤホンを片耳ずつ着け、まるでカップルのような至近距離で一緒に曲を聞きながら談笑していて、俺も御幸も静かに立ち尽くした。
…いや…、でも…東条とは前から仲良かったし…ただの友達だろ、うん…。…いつの間にか呼び捨てになってるのが気になるけど…。

「玉城ちゃん、俺と言うものがありながら…」
「え?…あ!」

御幸がアホなことを言うと玉城さんはこちらに気が付いて、俺と目が合うとミュージックプレーヤーを取り落とし、その弾みでイヤホンが外れて落ちた。慌てる玉城さんの隣で東条がそれを拾い、玉城さんに手渡す。

「くっ…倉持先輩、こんにちは…」
「おう…」
「玉城ちゃん、俺は?」

玉城さんはもじもじ肩を竦めて、ちらちらと助けを求めるように東条を振り向いて、東条は微笑みながら玉城さんの肩を叩く。お…俺を意識してんのかな…!?

「あっ、光〜!」

そこへ廊下の向こうからやって来た玉城さんの友達が玉城さんに駆け寄って、抱き着く勢いで玉城さんの両腕を掴み、くるくると回った。

「楽しみ〜!早く放課後にならないかなぁ!」
「う、うん」

放課後どこかに行く約束でもしているんだろうか。女子たちが無邪気にはしゃぐ様子は華やかだ。
そのうち友達も俺たちに気が付いて、あっこんにちは〜!と気さくに挨拶してきた。そして何かを思いついた顔で、玉城さんを見て…

「えい!」
「きゃ!?」
「!?」
「!!?」
「!?!?」

翻るスカート、覗く白い太ももの、滑らかで柔らかそうな曲線と、その先に一瞬だけ見えた、肌を覆う白い布地…
し…、白…。

「や、やめてよ倉持先輩の前で!」

玉城さんのついて出た言葉に対し、

「えっ」

息を飲む俺と、

「玉城ちゃん、俺はいいの?」

自分を指さしぼやく御幸、

「……。」

苦笑顔のまま固まっている東条。
友達は悪びれず笑っている。

「玉城ちゃん白かぁ〜…」
「水着だもん。」
「え?」
「下着じゃなくて水着です。」

水着?な、なんだ…。…いやそれでも十分だけど。

「水着だから何?」
「…別に見られても…」
「バカ!!」
「!?」
「玉城ちゃんは男を舐めすぎ!!男にとっちゃ水着だろーがパンツだろーがたいして変わんねーんだよ!」
「な、何言って…」
「倉持だってこんな涼しい顔して頭ん中じゃさっきの光景を繰り返し…」

俺に矛先を向けた御幸にカッとなって怒鳴り返そうとした直前、玉城さんが先に声を上げた。

「ちょっとなんてこと言うんですか!倉持先輩はそんな人じゃないもん!」

え…、ええ〜…!?
俺そんな聖人みたいに思われてんの…!?ハードル高ぇよ…俺は普通の男子高校生だよ…

「いやいやいや、わかってないな〜玉城ちゃんは…男なんて皆頭ん中エロいことでいっぱいだぞ、なっ東条?」
「えっ」
「だから!御幸先輩と一緒にしないでよ!ね、東条!」
「…あはは…。」

東条も不憫になってきた。

「じゃあ御幸先輩は今のドキッとしたんですか〜?」

あいかわらずけろりとした笑顔で爆弾発言を投下する玉城さんの友達。御幸はけらけら調子よく笑いだした。

「当然!」
「サイテー。変態」
「いや当たり前だろ!」

冷ややかな目で御幸を睨む玉城さんに御幸は反論する。そりゃそうだ、今の反応しなかったら男じゃねーだろ…

「でもこれからは俺以外の男の前で玉城ちゃんのスカート捲らないでほし〜な〜。えーと…鷹野さんだっけ?」
「鷹野でーす!気をつけまーす!」
「ちょっと…。御幸先輩の前でもダメに決まってるでしょ」
「俺だけの時ならいいよ♪」
「なんでですか。何言ってんですか」
「なんでって…俺の未来のお嫁さんだから(笑)」
「はぁ?もう…バカなの?」

玉城さんはにわかに顔を赤くして御幸を睨んだ。

「そんな約束した覚えないです」
「はっはっはっ愛してるよハニー(笑)」
「……。」
「氷の眼差し!」

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