「じゃあ、皆。よろしくな。」
メンバー4人を見渡して、スノウが取り仕切るように言った。
そして視線をアンに見止めると、スノウは柔らかな笑みを浮かべた。
「アン、君が来てくれて心強いよ。」
するとアンは少しほほを赤くした。
「私なんかがスノウの班の紋章兵で、いいのかな…。」
たしかに、次期騎士団長と名高く、領主の一人息子でもあるスノウの班は重要で、この班に選ばれたということは、かなりの大抜擢だということは明らかだった。
「何を言ってるんだ、君が来てくれてうれしいよ。」
スノウはとっさにそう力説し、はっと顔を赤らめる。
「あっ…、いや、紋章の腕も、確かだし。見習いの時から、よく組んでいたから、連携も取りやすいだろうからね。」
「あ…ありがとう。」
二人の様子を見てジュエルはにやにやと口元を緩める。
それを見たケネスは、いぶかしげに首を傾げた。
「じゃ、じゃあ、早速仕事にとりかかろうか?」
スノウがごまかすように取り仕切って、一行は港へと向かった。
歩きながら、ジュエルが歩みをゆるめてアンの隣に並ぶ。
「女同士、よろしくねー、アン!」
「うん!よろしく。」
楽し気に笑いあう女子たちを、男子たちは少しそわそわとしながら見守った。
***
船は穏やかにミドルポートを目指す。
幸い魔物もほとんど出ず、アンは甲板で静かな海風に癒されていた。
海風になびくつやのある亜麻色の長い髪を、その海の色をそのまま映したような青い瞳で、カイはじっと見つめていた。
アンは美人だ。
この群島では、どこか異質で、浮いているほどに。
とくに、強い太陽に照らされて真っ白に輝く肌は、見ているだけで涼しげで、溶けて消えてしまうのではないかと思うほど儚げで、つい目を引き寄せられてしまう。
それだけではない。
彼女のどこか俯瞰した物の見方も、同期の中では大人びていて、カイには惹かれる思いがあった。
おとなしいけれど、間違ったことやトラブルの時にははっきりと意見を言うし、弱い者のそばに寄り添ったりもする。
陰でこっそりと落ち込んでいる人がいると声をかけていたり、馴染めない者がいるとそっと輪に誘ったりするところを、見習いの時に何度も見た。
だからこそアンを慕う人は多いが、はたからみて仲がいいと誰もが認めるのは、やはりポーラくらいなものだ。
アンは、あまり自分の話をしない。
自分と同じ孤児で、とある紋章士に拾われ、育てられたという噂だけが囁かれている。
その噂もまた、彼女のミステリアスな魅力を深めている。
そして自分と同じ孤児というところに、カイはひっそりと、親近感を覚えていた。
するとそこへケネスが歩いてきて、手すりにつかまって海を眺めているアンの隣に並んだ。
「休憩か?」
「あ…ケネス。うん。紋章砲の調整をしてたんだけど、すこしめまいがして、外の空気を吸いに。」
「そうか…無理はするなよ。水でも持ってこようか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。」
いつも冷静で、誰かに入れ込んだりしないあの真面目なケネスも、アンには夢中なようだ。