休み時間。
花城さんが教室を出て行くと、それを待っていたかのように、鷹野が俺のところに駆けつけてきた。
「東条くん!」
「な、なに?」
鷹野の勢いにおされながら返事をすると、鷹野は花城さんの席に座って頬杖をついた。…長い話なんだろうか。
「明日ヒマ?」
「明日…?」
明日は地方予選前の、最後のオフ。近くの商店街でお祭りが開催されることもあって、遊びに出る野球部員は多い。俺も信二と一緒に行こうかと話していたところだった。
「明日は…友達と商店街のお祭りに行くんだ」
「え!ちょうどよかった!」
「え?」
「それ、うちらと一緒に行かない?」
え…、うちら、って。
「私と光!」
「…え!?」
ま、まさか突然、花城さんとお祭りに行くことになるとは…!
嬉しい。でも緊張する…!それに信二になんて話そう?まあ、嫌がりはしないとは思うけど…。
「な、なんで?」
「私さあー、光に青春を謳歌して欲しいのよね。」
「はい…?」
「だから〜、男女でお祭りとか。放課後遊ぶとか。そういうのよ。」
「う、うん…?」
よくわからないけど…
俺にとっては、ラッキーだけど…。
「…でもなんで俺?」
「光、東条くんとは話しやすそうだから!」
「…え!?そう、なの?」
「うん!」
鷹野から見てそう思われるのは…なんか、嬉しい。
「…あ!これ、まだ光には内緒ね!」
「え?」
「明日の放課後まで内緒で!」
「な、なんで?」
「じゃないと光、やっぱ行かないって言いそうだー」
それって…俺、いないほうがいいんじゃ…。
そう考えてふと、この前花城さんから言われたことを思い出した。
禁止されてる…って。あれって多分…男との接触を、ってことだよな?
「…なあ鷹野、この前さ」
俺はこの前の、三木から頼まれて花城さんに連絡先を聞いた時のことを鷹野に話した。
「…って言ってたんだけど…やっぱ、俺たちと行かないほうがいいんじゃ?」
「あー…それはねー…」
鷹野は難しい顔をしてため息をついた。
「光の家って、ちょっと特殊だからねー…」
「花城さんちって、学校の裏の方にあるでっかい豪邸だろ?」
「うん、よく知ってるね」
「噂で…。やっぱ、そういうの厳しい家なの?」
「ん〜…厳しいって言うか〜…」
鷹野さんは何か事情を知っているらしく、頭を抱えて唸り出す。
「まあ…色々あってね。でも、光ってせっかくあんなに可愛いのに、それじゃもったいないじゃない?」
「え…あぁ…、まあ、モテるもんな、花城さん」
「でしょ!?だから、私は光に青春を楽しんで欲しいの!」
わかったような、わからないような…。
「だから明日はよろしくね、東条くん!」
「う…、うん」
「司?」
と、そこでいつの間にか戻ってきていた花城さんが、不思議そうに立っていた。
ぎくりと肩をすくめた俺と鷹野を、花城さんはチラリと見る。
「どうしたの?」
自分の席に座ってまで俺と話し込んでいる鷹野に尋ねる花城さん。
「な、なんでもないよ!ごめんね席借りて!」
「別にいいけど…自販機行くし、まだ座ってていいよ」
花城さんはそう言って、しゃがんで自分の鞄から財布を取り出した。
「あ!待って私も行く!東条くんも行こうよ!」
「え!?あ、うん…」
お祭りの前に鷹野は俺と花城さんをもう少し打ち解けさせようとでもしているのか、俺を誘ってきた。俺は従って、ポケットの財布を確かめて立ち上がった。
「