「よっ、お疲れ」
「…何その大荷物」
翌週光の家に行く時に、俺はスーパーで食材を買うだけでなく、ホームセンターで調理器具や食器も買い込んでいった。
「光んちなんにもねーからさ。フライパン一個じゃ大したもん作れないし…それに俺の飯も一緒に作って食った方が楽だし。必要なもん買ってきた」
「……。」
ぽかんとする光をよそに、俺はさっさと料理を始める。ワンルームの狭いキッチンだから限界はあるけど…光にしっかり栄養をとってもらいたい。
今がオフシーズンで本当によかった。シーズン中ではこんな風に光のところに通うなんてとてもできない。
今日は魚を焼いてお浸しと味噌汁を作り、買ってきた小さな炊飯器でご飯も炊いて、純和風定食にしてみた。
テーブルに料理を並べると、光は驚いた様子で目を瞬いた。
「…なんでも作れるんだね」
「そうか?大したもんじゃないけど」
「料理作れるの…知らなかった」
「まあ昔からやってたからな」
「…え?」
「俺んち、親父しかいないからさ。俺が小さい頃にお袋が亡くなって」
「え…。」
光は目を瞬いて俺を見つめ、恥ずかしそうに俯いた。
「ごめん…知らなかった」
「まあ、言ってなかったからな」
「……。」
「ほら、いいから食おうぜ。いただきまーす」
俺が食い始めたのを見て、光も手を合わせて小さな声でいただきます、と呟いた。
「…おいしい」
「そう?よかった」
光は一口一口噛み締めるようにして咀嚼した。それは今にも泣きそうに見える顔で、俺は素知らぬふりをしながらもこっそり様子を窺いながら食事をした。
***
「あれ、なんか変わった」
数日後に光の部屋へ行くと、ローテーブルの下にはラグが敷かれ、可愛らしい座布団もふたつ置かれていた。
「寒くなってきたし…」
「俺も来るし?」
「……。」
調子づいたことを言うと光は頬を赤くして俺を睨む。
「はっはっは!冗談だって。じゃ、チャチャっと作るからちょっと待ってな」
俺はそう言ってキッチンに買ってきた食材を並べる。光はそんな俺を見て、部屋には戻らず隣で作業を見始めた。
「寒いから向こう行ってろよ」
「…いい」
光は頑固だし、そばにいてくれるのは俺も素直に嬉しいから…俺はそれ以上は言わずに料理を始めた。
今日は寒いから鍋を作る。つみれを作って出汁の中に入れ、他にも豚肉、春菊、白菜、こんにゃく、ネギにしいたけ…。
ぐつぐつと音がしてくると部屋にいい匂いが充満し始めた。
「もうできるからこれ持ってって待ってて」
「…うん」
光に鍋敷きと取り皿と箸を渡し、部屋に運ぶよう言った。様子を見計らって火を止め、俺は鍋を運んだ。
「ほい、食おう食おう。腹減ったわ俺」
ふっと、光がかすかな笑みを浮かべる。ちょっとでも元気になってきたのかな…だと嬉しい。
いただきます、と手を合わせ、おしとやかに鍋をつつく光を見ていると俺の顔は緩む。
なんだろうなこの気持ち…。なんかやっぱり…光と一緒にいると落ち着くし、嬉しい。
「ほれ、もっと食え」
「じ…自分でやるからいいってば」