東条が花城からチョコを貰っていたことに、ショックを受けた自分がいる…。

友チョコだとか言ってたけど……。


――ガコン。

自販機からホットコーヒーを拾い上げ、少し飲み、ベンチに座ってたそがれた。
花城。花城…。俺っていつも花城のことばっか考えてんな。
でも、あっちは興味もなさそうで…。

「…あ。」

小さな声がして顔を上げると、気まずそうな顔をした速水が立っていた。

「…よぉ」
「う、うん」

気まずい挨拶をして、速水は少しためらってからスポーツドリンクを買った。こんな寒い日に。

「……。」

そしてその場で一口飲み、挙動不審にそわそわして、意を決したように俺を見た。

「あの…さ、御幸、」
「ん?」

速水から何か切り出されるときは、つい身構える。普段ほとんど話さないし、たわいもない話を振られることはあまりないから…。

「…バレンタイン…花城さんから貰った?」
「え?」

…何を言ってんだこいつは。

「…いや?」

俺が首を横に振って速水の顔をうかがうと、速水はなぜか驚いたように目を瞬いた。

「え…、あ、そーなんだ」
「え、何その反応…」
「いや、俺はてっきり…」

…てっきり?俺が花城からチョコをもらったとでも?なぜ??

「いやいや…なんで?」
「あ、いや、なんとなく。」
「いや…ありえねーだろ。何言ってんの?」
「えー…、ははは…。」

速水…まさかまだ花城が俺を好きだと勘違いしてんの?そもそも、なんでそう思ったのかすら謎なんだが…。

「御幸って…花城さんと仲いいからさ。」

そうつぶやいた速水はどこか苦笑いを浮かべている。

「…んなことねーよ。」

俺はそうつぶやき、気まずさから逃れるために立ち上がった。

「じゃな。」

動揺を隠して足早にその場を後にする。
だけどあんなこと聞いてきたってことは、速水も花城からは貰わなかったのかな…。


***


「御幸君!おはよう…!」
「あー、おはよう…」

相川さんと廊下ですれ違うと挨拶をされるようになった。これはアプローチ…なんだろうな…きっと。

「みゆきせ〜んぱい」
「うわっ!?」

突然背中を小突かれて低い声で囁かれ、俺はゾッとして飛び上がった。
振り向くと、じとりと俺をにらむ鷹野がいた。

「あ…鷹野?なんだよびっくりした」
「可愛い人ですねぇ〜彼女さんですか?」
「ちげぇよ」
「ふ〜ん」
「なんだよその目は…」

鷹野は意味深に俺をじろりと睨みながら腰に手を当てた。

「先輩あの人にチョコ貰ってましたね。」
「…なんで知ってんの?」
「見ちゃったんですー。」
「え?」
「光が悲しんでましたよ!」

鷹野のいつもの冗談だと思って、俺は苦笑した。

「あー、そう…」
「あー信じてない!」

花城が俺のことで悲しむとか、ないない。

「光、速水先輩と付き合っちゃいそうですよ。」
「……。」

鷹野は相変わらず容赦なく、グサリとくる言葉を唐突に…。

「いーんですか!?」
「いいんですかって、なにがだよ。」
「光と速水先輩が付き合ってもいいんですか!?」
「なんで俺に聞くの?」
「え、だって御幸先輩って光のこと好きでしたよね?」
「…は!?」

顔が熱くなって頭の中が真っ白になった。鷹野は白けた目で俺をにらんでくる。

「いやバレバレですよ」
「……。」
「知りませんよ私は。忠告しましたからね!」

鷹野はなぜか怒った調子でそう言って、くるりと後ろを向いて大股で去って行った。
なんなんだ一体…。

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