続きはまた今度

越前リョーマ


出国してから二ヶ月。
メールしても電話しても素っ気なかったリョーマ。
試合に集中して欲しくて、あまり連絡取らなかったんだけど、取らなさ過ぎて「アンタの彼氏はダレ?」ってスカイプが来たから、一応想われてるんだって安心したのが先週。

今日はリョーマが帰ってくる日だ!


「……あっ!キタキタ……!」


ゲートから出てきて、恐らくあたしの姿を探すだろーなーって思ってたから、ちょっと隠れて焦る姿を見てやろう……なんて思って。
物陰でニヤニヤしてたら、気が付つくとリョーマの姿を見失ってしまった。

あ……ヤバい。人多すぎて分かんない……!

逆にこっちが焦りまくってたら、後ろから腰の当たりをツツ〜〜と撫でる何か。


「ひぎゃっ!」
「うわっ!変な声出さないでよ。ビックリするじゃん」
「…………リョ、リョーマ!」
「ずいぶん下手くそに隠れてたね。丸見えだったよ」
「……え。お気付きでいらっしゃった……?」
「そんな試すような事しても無駄だよ」


ニヤって笑ったリョーマが、今度はあたしの頭に優しく手を置いた。
本当に久々の感覚で、そこに一気に熱が集中するみたいで。いくらか動悸が激しくなる。


「ただいま、凛」
「うぅ……おかえり、リョーマ」


名前で呼ばれた事がまだ何となく慣れなくて、その場で固まってると……リョーマも同じように動かない。

え?なになに。どゆこと?――……え、み、見つめないで!恥ずかしいッ!
ちょ、せめて抱きしめるとか色々ない?!感動の再会じゃん!!


「続き」
「……へっ?!」
「続きするって言ったじゃん?覚えてる?」
「続き?…………ハッ!ああああ、しししししないっ!こ、こんなとこで何するつもりだっ!」
「あはは、ジョーダンだよ。何、顔真っ赤になって否定してんの」
「〜〜〜〜ッ!からかったなっ!」


ガラガラと荷物を押して、出口に向かうリョーマ。
こんなやり取りが出来る事が幸せで、あたしはからかわれてもニヤニヤしちゃう。
チラッと後ろを歩くあたしを見たかと思ったら、空いてる左手をリョーマは差し出した。


「ホラ。迷子になるよ」
「あたしは五歳児かってーの」
「迷子になって騙されたら大変じゃん?騙されるのは俺だけにしときなよ」
「……もう十分騙されてる気がする……」


おずおずと自分の右手を差し出すと、ギュッと握ってくれて。一気にあたしの中に広がる、リョーマの体温。
嬉しくって恥ずかしくって……何かもう、顔が見れないよ……。





空港を後にして、とりあえず荷物を置きにリョーマの家に向かう事にした。
そのあと、どこか出かけようって。明日から学校だけど、よく動く体力あんなーと感心してしまう。

家に着くとリョーマのお母さんが出迎えてくれて、リョーマはあたしの事を「彼女の二宮凛」と紹介してくれた。
その響きが嬉しいような恥しいようなで、もう
顔も上げられないくらい真っ赤になってしまった。

あたしはお家にお邪魔しないでいようと思ってたのに、何故かリョーマのお母さんによって、リョーマの部屋に案内されてしまう。

い、いきなり彼氏の部屋とかお母さんとかって、何かハードル高くないッ?!

グルグル良くない想像を巡らせてると、着替えてお茶を持ってきたリョーマが部屋に入ってきた。


「悪いね。ウチの母親が」
「え!全然!平気!逆にあたしが、お母さんの心象悪くさせてないかが心配だよ」
「それはないから。むしろ何か喜んでた」
「えぇ!!」


リョーマは「変な声」と笑って、テーブルにお茶を置く。そしてあたしの向かいに座ったと思いきや……。
何か思いついたような顔をして、ジリジリとあたしとの間を詰めてきた。

え、なになに。え、ちょ、近いよ?!ダメダメ!顔見れないじゃん!
ヤバいって!顔が熱すぎる!久々のリョーマは目に毒だって!


「ねぇ、凛」
「ぅぅ……はぃ……」
「ふっ、何その声」
「え!いや……緊張して……」
「ふーん。緊張だけ?」
「ううぅぅぅ……」
「ホラ。言ってみてよ」


な、何か!めっっちゃグイグイくるけど……何?!
こ、こんなの見た事ないし聞いた事もないリョーマだってば!
待って待って!無理。何も言えない!顔熱いし、身体中燃えてるみたい……!


「言えない?」


耳元で囁くように言葉を紡がれると、身体がビクッと自分の意志とは関係なく動く。

耳弱いんだよ、あたしはッ!

何も言えなくて、顔を手で隠しながら頭を上下にコクコクと動かすしか出来なかった。


「素直じゃないね。まぁ、そんなとこも可愛いんだけど」


だっ!かわっ?!クッ……だめッ……。もう、限界ッ!思考回路がパンクする……!

口をパクパクさせて何も言えないているあたしを、リョーマはあたしの肩をグイッと引き寄せる。
何の準備もしてないあたしは、いとも簡単にリョーマの腕の中に収まってしまった。


「はわわわわわ……」
「なに」
「や、だって。こんな。そんな」
「言ったじゃん、続きは帰ってきたらって」
「今、続きしてんの?!」
「何だと思ってんの?」


そんな続きだとはつゆ知らずって、続きって何さ!何をする事が続きなの?!


「自分じゃ自覚ないようだけど、アンタの気持ちなんてとっくに分かってるからね。こうされたいって」


顔が限界まで近付いて、思わずギュッと目を瞑る。
唇に柔らかい何かが触れた。それがリョーマの唇だって理解したのは数秒後。

ふぁ、ファーストキス……!

リョーマの唇が離れたな、と思ってた目を開けたら……照れくさそうにして、あたしのおでことリョーマのおでこが触れていた。


「何?もっと欲しいって?」
「ち、ちが……」
「耳まで真っ赤じゃん」
「あ……だ、だめ。耳、触んないで……」
「あ、耳弱い?」
「うぅ……心臓痛い……」
「凛、俺一色だね。そーゆー顔、俺以外の男にしちゃダメだよ」
「するわけないって……」


すると、今度は長い長い……キスをされる。
もう、何も考えられない。リョーマでこんなにもいっぱいにされちゃうなんて。

こんなリョーマ、あたしは知らない。
でも。
知っているのはあたしだけ、にして……。










続きはまた今度
(リョーマ、出かけなくていいの?)(そのつもりは無かったけど)(……え?)(出かけたら凛のそんな顔見れないでしょ)


*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*

♡Thanks!>>確かに恋だった

【一枚上手な彼のセリフ】より。
1.試すような真似しても無駄2.顔真っ赤にして否定されても3.俺以外に騙されるなよ4.素直じゃないところもかわいい5.あんたの気持ちなんてとっくに知ってる
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