「ねぇ、不二。不二達って付き合って何年だっけ?」
「なぁに、唐突に」
「や、なんとなく気になって」


学校の昼休み。俺と不二は教室で昼飯食べてる最中だった。
今日は不二の彼女の雫ちゃんも、俺の彼女の紬も一緒に食べられない日で。(紬が放送委員会で、雫ちゃんも手伝うんだってさ)
まるで行き場を失ったかのように、二人教室でお弁当を開け始めたのがさっき。


「……中三のときからだから、もうすぐ丸三年かな」
「あ、不二〜ハンバーグちょうだいー!そっか、三年かー。長いね」
「はいはい。どうぞ。母さんも英二に取られる前提でお弁当作ってる節があるんだよね。まぁ、長いと言われれば長い……のかな」
「マジで?!おばさん、ありがとー!うんまー!つーかさ、なんか不二と雫ちゃんって……熟年夫婦的な感じだよね」
「はい?」


不二のおかずをもらったお礼に、俺の嫌いなおかずを不二のお弁当にそっと忍ばせる。
それを目ざとく見つけた不二は、また俺の弁当箱にそれを戻しやがった。くそぅ。食べてよ。


「だからー。なんか言わなくても分かりますけど?っつー雰囲気がある」
「あぁ、そういうこと?まぁね。多分お互いに、なにが欲しいとか考えとかは分かってるとは思うよ」
「多分なの?」
「言い方悪いけど、やっぱり他人だしね。全部知るのは難しいかな」
「ふーん。でもさ不二。不二は俺のことなんでも分かってるじゃん」
「それは英二が単細胞だから……」
「ちょっと!また言った!」
「英二達はちがうの?」


単細胞を否定しろよ、まずは。
でも不二が投げかけた疑問は、実は俺の中にあるちょっとした悩みで……。
紬と付き合い初めて一年。喧嘩はしょっちゅうだし、俺がして欲しいことしてくんないし、俺も紬のこと分かってないとこもある。
なんか付き合う前のほうが仲良くね?って思うこともしばしば……。


「んー……不二と雫ちゃんみたいなのが理想なんだけどね」
「別に僕達も喧嘩しないわけじゃないよ?」
「それは知ってる」
「初めの一年くらいはすごく喧嘩してたと思うけどな」
「え。そだったっけ?覚えてない……」
「僕もなにで喧嘩したかは覚えてないけどね。でも、それがあるから今があるんだよ」
「喧嘩したら将来よくなるの?」
「喧嘩しないに越したことないけどね。でも、喧嘩することでお互いのこと分かってくるでしょ?僕と雫も、そうやって今の関係築いてきたってことだよ」


なんか難しくてよく分かんない。
俺は喧嘩なんてできればしたくないけどね。紬は気が強いから引かないんだよなぁ……。

ポツポツ嫌いなおかず以外を食べてると、教室のスピーカーから不二の好きな曲っぽいのが流れてきた。ジャズだよね、これ?お昼休みの校内放送、今日は生徒のリクエストを流す日だ。


「あれ?不二、リクエストしたの?」
「ううん、まさか。僕以外にもジャズ好きな生徒でもいるのかな?」
「まっさかー!不二くらいっしょ!高校生でジャズが好きなんて!」
「英二。失礼じゃない?」
「……ッ!ご、ごめんなさいぃ……」
「怒られるの分かってて言うんだから」
「怒られるの分かってたら言わないって」
「だから単細胞って僕に言われるんだよ」
「くっ……!」


不二が食べ終わったお弁当箱をカバンにしまって、読みかけの本を出したとこで不二の携帯に通知が入った。
本を机に置いて、携帯を操作する。表情がかなーーり穏やかだから、雫ちゃんからかな?


「ふふ」
「雫ちゃんだろ?」
「うん。さっきの曲、雫がリクエストしたんだってさ」
「へ?」
「僕の好きな曲、かけたかったんだって。あ、だから今日紬さんに付き合って放送室行ったのか」
「ふえ〜〜!雫ちゃんからの愛だわ〜!」


えーいーな〜!俺もそーゆーの紬としたい……って、無理かなぁ……。紬、俺の好きな曲とか知ってんのかな。つーかそこじゃない。その域にまだ達してないわ……俺ら……。

嫌いなおかずを残したお弁当を俺もしまって、携帯に視線をうつした。不二は雫ちゃんに返信したあと、さっき机の上に置いた本を読み始める。
なんか、不二の顔はすっごく満足そう。やっぱりうれしかったんだな〜。

雫ちゃんからのリクエストの曲が終わり、校内放送も終わりかなーと携帯をいじりながらぼーっとしてたら……次はポップな曲が流れ始めた。
ん?いつもリクエスト一曲とかじゃね?……あ、れ?これ……もしかして……。


「これ、英二の好きなやつじゃない?」
「……うん。そう……」
「もしかしたら紬さんかな」
「え?!だって、俺言ったことないよ?!」
「……愛、なんじゃない?」


一気に顔が熱くなった。え?だって紬、知らないはずなのに!
しかも昨日、ちょっと喧嘩っぽくなっちゃってたのに!え?えぇ?!!
すると、俺の携帯にも通知音が鳴った。紬から。


「なんだって?」
「……言えにゃい」
「ふふ、愛を囁かれちゃった?」
「もー……すぐキザなこと言うよね、不二って」
「そう?思ったこと言っただけだよ?」
「さすが、モテる男。不二周助」
「それは関係ないよ」
「あ。モテることは否定しないだぁ。雫ちゃんが聞いたらどー思うかなぁ〜」
「笑って終わりだよ。雫なら」
「……俺もそー思う」
「ついでに紬さんも」
「へへ、俺もそー思う!」


単純なことだけど、たったこれだけでもすごく分かった気がしてる。
さっき、不二が言ったみたいに……少しずつ分かればいいんだよね。焦っちゃダメだな。


『昨日はごめんね。確か英二の好きな曲だよね、これ。私も好き』


だから、俺も。


『うん、俺も好き』


こういうところから始めよう。
俺達はまだまだこれから。










昼下がりの羨望
(英二と紬さんって、いいコンビだと思うよ)(ん?なに、急に)(夫婦漫才かなってみてると思う)(……夫婦漫才……)(それだけお似合いってことだよ)

昼下がりの羨望

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