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謝必安と范無咎。
傘に魂を宿し、一つの体を通して共存している彼ら。
そんな彼らと初めて会った時の事はよく覚えている。
それはゲーム中盤、残りの暗号は2つ。
仲間が1人荘園送りにされ、1人が椅子に縛られている状況だった。
もう、すぐに椅子が飛ぼうという時に傘が独りでに向かってきた。
止まったかと思うとそこから白い人が現れた。
不吉な心拍音と共にハンターなんだ、と気付き逃げる。
必死に走っても、ハンターの大きな歩幅であっという間に間合いを詰められ、勢いよく殴られる。
衝撃に押され転びそうになりながらも振り返ると、不敵な笑みを浮かべていた。
さっきのは傘で殴られたんだ…
残っている仲間から早く逃げて!と送られてきたが、目の前にいるのを確認して慌てて方向を変える。
確認した時は十分な距離を取れていたと思っていたのに、赤い視野が視界の端に写り、もう一度殴られた。
体は吹っ飛び、意識が朦朧とする…
次に意識が戻ってきた時には、残っていた仲間も椅子に縛られていた。
目の前には傘を持った長身のハンターが立っている。
すっと腕を伸ばされ、思わず身を竦める。
だが…痛みに襲われる事はなく、ただ頬を撫でるだけだった。
「な……なにをする気…?」
「………」
「……ヒッ…」
私が話しかけると、それは嬉しそうな背筋の凍る笑みを浮かべた。
「あなたはとても可愛らしい人だ…」
「ぃ……いや……」
「もう少し私と話をしましょうよ…」
誰にも邪魔されないでしょう?
状況が違えば、きっととても優しい人だと思っていただろう。
「私は謝必安と言います、あなたは?」
「………サクラ…」
「サクラと言うのですね…あぁ、よくお似合いです。」
「…………」
「あぁ、私はこの傘を通じてもう一人の魂を宿しているんです。」
「どういう…こと…?」
「彼にも自己紹介してくださいね。」
優しく語りかけ笑う、謝必安…と言う人は傘を広げるとみるみる内に溶けた。
その代わりにまた同じ形を作る液体が、固まっていく。
「……」
「……………」
今度は白い謝必安さんの代わりに黒い人が現れた。
「お前か、必安の気になってた女っていうのは…」
「あ…あなたは…誰?」
「俺は范無咎だ、お前の名は。」
「…サクラ……」
「サクラ…ふん、覚えておこう。」
謝必安さんとは打って変わって、ぶっきらぼうに話す范無咎…という人。
「先程の謝必安…さんは、話がしたいと…」
「そうか。」
「…………」
ずっと見下した様な目は、私をじっと観察している。
ニィッと笑うと
「お前、ここから出たいか?」
と、答えが決まりきっている質問をする。
「当たり前でしょ…」
「フッ…ヒッヒッヒッヒッ…!なら、そのまま這いずって行け。」
「…!」
「ハッチはあっちだ。」
指を指した方向は湖。
背の高い彼には見えているのだろう。