1.范無咎
黒い彼は白い彼とは全く違う。
でもそんな二人を好きになってしまったのだ。
背が高くてぶっきらぼうな性格。
「無咎、また喧嘩したって聞いたよ?」
「…喧嘩じゃねぇ。」
「でも、マーサが…」
「あの女が一方的に突っかかってきただけだ。」
「もうっ、またそういいこと言う。」
マーサに後で謝らなくちゃ。
無咎の性格上、よくサバイバーの皆と口喧嘩が起こる。
いつも言葉足らずか、一言多いのだ。
その後は私が謝っている。
皆も分かってはいるけれど、お互い譲れない何かがあるのだろう。
「なぁ、サクラ……」
「なぁに?」
「……もしも……」
「…?」
「……ッダァ!やっぱ何でもねぇ!」
「……そう。」
「…………」
気が乗らないのか、言いたい事を言いきらずに肩に顔を埋めた。
背中に腕を回されギュッと抱きしめられる。
よしよし、と頭を撫でてあげるとスリスリと甘えてくる。
無咎は甘えたなのかもしれない。
「マーサ、無咎がごめんね。」
「へ?あぁ、あれね。別に気にしてないよ。」
「何か酷い事言われてない?」
「何も言われてないよ。それよりあいつから何か貰った?」
「え…?ううん。」
「そう、まったくあの男は…」
「…?」
「相談されたのよ、サクラにって。」
無咎は男勝りなマーサと話しやすいのか、女性サバイバーの中ではよく話している。
そんな彼がマーサに相談を持ちかけたらしく…
「あなたに贈り物をしたいのだけど、何が良いだろうかってさ。」
「私に…無咎が贈り物…?」
「そっ、だからそんなの自分で考えるか、本人に欲しい物聞いたらって言ったら、怒鳴られてさ。」
「あらら…」
「贈り物ってのは相手の事を考えてたら、自然に分かる!って言い返してやったわ。」
「喧嘩じゃ…なかったんだね、良かった。」
「えぇ、だけど内緒よ?」
「うん、分かってる。」
まさか、無咎が私にプレゼントしたいだなんて思ってもみなかった。
マーサに相談したのもきっと同じ女の子として、アドバイスが欲しかったんだろう。
無咎は最終的に何をプレゼントするのだろう?
少し楽しみに待つことにした。
その日は案外早くに訪れた。
名前だけ呼んで手の上にプレゼントが置かれる。
「気に入って…もらえるか……分かんねぇけど………」
(何を貰ったって、その気持ちが嬉しいのに)
「…俺の気持ちは込めたつもりだ。」
箱を開けると黒と白を基調にしたネックレスが入っていた。
高くはなかったのだろうか…?
「お前…いつも手握りしめてるから…気休めにと思って。」
「ありがと…!嬉しい!」
「そ、そうか……良かった…」
私の事を心配してくれる彼が出した答え。
彼らしい伝え方だと思った。
人より不器用だから
言葉を形に
(不安な時は俺達を思い出してくれ)
(そうすりゃあ少しは安心出来るだろう?)