力強く腕を引っ張られ、後退する私の目の前を太い枝が落ちる。
本当に危なかった。
あまり大きくないとは言え、高いところから勢いよく落ちてきたあれに当たっていれば、ひとたまりもなかった。
生命の危機を感じ、今起きたことへの驚きでドキドキが止まらない。

「あ、ありがとうございます…タイウィ…」

後ろを振り向けば、間近に今まで見たことの無い表情をしたタイウィンさま。
どうしてそんな顔をするの…?
落ち着きかけた心臓がまた痛み始める。

「は…す、すみません…肩は大丈夫ですか?」
「は、はい…」

我に返ったように声をかけるタイウィンさまはいつも通りで…
私の見間違えだったのかな…

森を制覇しても結局何の手がかりも見つからなかった。
その代わり、多くの民を助けた。
迷子になっていた人達を街へと送る。
再会を喜び、日常へと戻ることができた感謝に謝礼を受け取る。
資金が増えたことはありがたいことだ。
一日中森の中にいたせいで、もう辺りは月明かりに照らされていた。


「騎士様、魔導師様、あちらに静かで綺麗な景色を堪能出来るオススメの場所があるんです。」

若い女の子…私と同い歳位だろうか。
いい場所があるから、お礼に二人で行ってみてはどうかと言われた。

「御二方とも素敵な方ですよね!」

と、ウィンクしながら隊員達に言い残して行った。
あぁ、実にそうだ…と深く頷く者が多数。

「タイウィン隊長、さくら様とご一緒に行かれてはどうでしょうか。」
「私もご提案します!気苦労も少なからずあるはず故、その御心を癒されてください。」
「………うんっ、ね、タイウィンさま、行きましょう?」
「…そうですね、見に行ってみる価値はありそうです。」

ごゆっくり〜!と、愛想のいい笑顔になりながら敬礼で見送られる。

(あの者たちに気づかれてしまった…)
(お外で二人きりなんていつぶりだろう…!)

指さされた崖の方へ歩いていく。
街灯に照らされた石段が上へと続いている。
どうやら観光名所になっているようだ。
ますます楽しみになる。
石段を登りきった先にはベンチがあり、切り開かれた場所だった。

「……きれい…」
「…………………えぇ、街を一望できますね…」

月明かりで光る海と共に暖かな光で包まれた街景色は見事なものだった。
街をこんな風に味わうのは、久しぶりだ。
いつもシュネル様探しに精一杯で、休む場所としか見れていなかった。
ポツンと置かれたベンチに並んで座る。