抱いてくれない、抱きたい

ジョージは知らないだろうけど、私は気づいてる。
ジョージが夜中こっそりベッドを抜け出すこと。
そして何をしているかということを。

ホグワーツを卒業して3年。(ジョージは中途退学だが)
WWW.は大繁盛。
毎日遅く帰ってきて一緒にご飯を食べることはおろか、私が先に寝てから帰ってくることや、次の日に私が出勤する時にはジョージは寝ているということなどは少なくはない。むしろ多い。

だから、最後にその…体を重ね合ったのはいつだか覚えてないほどだ。

ジョージと私の休みがかぶる時もある。でもジョージからは誘ってくれない。
勇気を出して私から誘ってみることも考えるが、羞恥心が勇気より勝って出来なかった。

もう、私のことを女として見れなくなったんだろうか。
もう5年も付き合ってるし。

ある日、私の堪忍袋が切れる出来事が起きた。
別に1人で性欲を処理するのは構わない。
だけど、私が誘ったこともあるのに(勇気を出して)、事もあろうか彼はAVをリビングで見ながら1人でしていた。

たまたまトイレに起きた時にリビングのドアから光が漏れていてAV女優のアンアン喘ぐ声も漏れていたので発覚した。

ドアを開けるとジョージは相当驚いていた。
そりゃそうだろう。
トランクスを下げて大事な部分をおっ起ててるところを私に見られたのだから。

でもそれ以上にジョージが驚いていたのは私の目から涙が零れていたからだ。

「#name1#?ごめん、泣くほど嫌だった?」

すぐしゅんとなったブツを急いでズボンにしまい、私の頬に触れようとする。
しかしAVとはいえ他の女で抜いていた手で触ってほしくなかった。
普段の私なら触れようが構わなかった。
だけどここ数ヶ月してないのに、休みも一緒にいるのに私じゃない誰かで抜いた手がとても汚らわしく見えた。

「触んないでよ!」

手を叩いて拒否して、リビングを出る前に見たジョージの顔はひどく悲しそうだった。
私の方が悲しいよ。


目がすごく腫れている。
ジョージは布団にかえって来なかった。当たり前だけど。リビングにあるソファにでも寝たのだろう。

私と目を合わせるの、気まずかったんだろうな…
そう思うと散々流したはずの涙が出てくる。
急いでぬぐい、仕事向かうために着替えた。

#name1#はかけもちしていた。
昼はハニーデュークスで販売と接客、夜は漏れ鍋より少し遠い居酒屋で接客に勤しんでいた。

「今日#name1#ちゃん元気なくないですか?」

若い男が声をかけてきた。
実はこの男、この居酒屋に就職してから名前にアプローチを繰り返している。
少々うんざりしていた#name1#である。

「はは、ちょっとありましてね…」

彼氏と喧嘩したなんて言えない。
そんな男やめてしまえと言われるのがオチだ。

「ねえ、今日飲みに行きませんか?」
いつもの#name1#だったらしつこいと思いながら断っていた。
しかしまだジョージに対する怒りと悲しみがおさまらない。

「いいですよ」
「本当ですか!?やった!」

その夜2人はどこにするかとあれこれダイアゴン横丁の街をウロウロしていた。
そこで、いい店を見つけたのだが───
ジョージとフレッドが中にいた。
何て悪いタイミングだろう。
幸いドアを開ける前でよかった。

「ここ、私好みじゃない!他の所にしよう?」
「そうなんですか?じゃあ違う所に」

彼がそう言った瞬間、誰かが2人のとなりに「姿あらわし」をした。
恐る恐る横を見ると、フレッドだった。

「なんだあ…フレッドか…ジョージだったらどうしようかと…」

しかしフレッドはベロンベロンに酔っていて#name1#の話など聞いていない。しかもとなりにいる男のことなど目にも入ってない様子だ。

「#name1#ちゃーん!久しぶりー!元気してたー!?
何で最近店来てくんないの?俺と会いたくないの?ねえねえねえ、」

フレッドはドアを開けてしまいぐいぐい手を引っ張り、一緒に飲もうと言った。

さすがに勘弁してくれと言いたくなったが、男が助けてくれた。

「今日#name1#ちゃんは僕と飲みにきたんです。手を話してもらえますか?」

フレッドは怒って口を開きかけたが、私が目でサインを送ると黙って私の頭をポンポンと叩いてジョージのところに戻った。

「何なんですか、あの人?」
「私の元同級生」

友達兼彼氏の兄弟なんてとても言えなかったが、後輩くんは納得してくれたようだった。

後輩くんとの食事は思いのほか楽しかった。
ジョージと来たかった。ジョージとこのご飯食べたかった。という思いが頭の中でふわふわ渦巻いていた。

そろそろお開きかな、と思ったところで後輩くんがとんでもないことを口にする。

ホテル行きませんか?

は?

「え、あの私…」

「彼氏がいるのは知ってます。でもどうしても諦めきれなくて…
それに今まで僕の誘い受けてくれたこと無かったじゃないですか。今回受けてくれたから脈アリなのかと思って…」

ンなわけねーだろ!
喧嘩してるだけなんだよ!


「違うの。彼氏のことしか好きじゃないわ私!今日はたまたま…」

ジョージと喧嘩して。
その事実が#name1#の胸をまた締め付けた。
ポロと涙が零れる。

その時個室のドアが開いた。
昨日から会いたくて会いたくて仕方ない人がそこにいた。

「ジョージ!」
「え、彼氏?」
「そうですけど、おたくは?」

ジョージは笑っているが目が笑ってない。
完全にキレてる。

「あの、#name1#さんの同僚」
同僚ですを言い切る前にジョージはお金をテーブルに叩きつけて私の腕を掴んで店を出た。

「ジョージ!痛いってば!放して!」

ジョージは聞く耳持たずという感じで#name1#の腕を引っ張り付き添い姿くらましをした。


「痛っ!」
着いたのは我が家だった。ジョージが#name1#を押し倒している。

「痛いよジョージ!手首…」

しかしジョージは手首を放さないし彼女の目を見ようともしない。

「何で他の男と飲みに行った?」

冷たい声に驚くが#name1#も言い返した。

「…ジョージだって他の女で抜いてたじゃない!」

「AVだろ!?浮気のうちに入んのかよ!?」

まだ分かってくれない。
他の男と飲みに行って怒るということは私のことがまだ好きということだ。
でもジョージは私のことを抱きもしない。
もしかして、好きと言っても"友だち"としての好きになって
しまったのだろうか。
ホグワーツを卒業して今まで同棲してきたけど、それが裏目に出て長い間一緒に過ごしてきたせいでジョージは私のことを女性としてすきではなくなってしまったのだろうか?

そこまで考えると昨日と今日合わせて2回も流した涙がまたまた溢れ出てきた。
ジョージは気まずそうな顔をしたが、すぐに#name1#から目を逸らした。

「ジョージ…私のこと、女として見れなくなった?」

「…は?」

「だって!ここ数ヶ月ジョージは私のこと抱いてくれないもん!そうとしか考えられないもん!」

「ちょっと待て」
「それにAV見るし!抱きたくないくらい女として見れなくなったならはっきり正直に言ってよお…」

あたふたとしていたジョージだが、#name1#をギュッと抱きしめて話出した。

「ごめん。#name1#の為を思ってたことが#name1#を傷つけて…
あのな、俺…」

そこでジョージは言葉を区切り、#name1#の顔を見た。

「その…#name1#のこと女として見れなくなったとかそんなんじゃない。俺はいつでも抱きたかった。だけど、1回タイミングがずれたら誘うタイミングが分かんなくなっちまって。
しようと言おうとしたけどタガが外れたら#name1#のこと抱き潰しちまいそうで…その…1人でしてました。」

ゴメンナサイとジョージは気まずそうな顔をして謝った。
そんな理由で──と#name1#は言いたくなったが、彼にとっては重要なことであり、自分を大切にしてくれた上での結果だと思い、口をつぐんだ。

でも私を抱いてくれないのにさすがにAVは嫌だったよ。と
拗ねてみせるとジョージが焦る姿が可愛くて思わず吹き出した。

「え?何?何で笑うの?」
「ジョージが可愛くて。」

今度は#name1#が照れる番だった。

「さっきも言った通り、ジョージに女として見れなくなったなんて言われるのが怖かったの」

ジョージはそんなことはないという顔をした。

「勇気を出して誘えばよかった」

へへ、と笑うと#name1#の唇にジョージの唇が降ってきた。
何度か啄むようなキスを繰り返した後は角度を変えて段々と深くなる。

苦しくてジョージの胸を叩いていったん唇が離れるが、ぷは、と彼女が口を開けて酸素を取り入れた後また唇が重なる。

ジョージは#name1#の上唇と下唇の間を舌でつつく。
唇が開いたところでジョージは#name1#の唇の隙間から舌を滑りこませ、彼女の口内を貪る。

舌を絡めたり吸ったり軽く噛んだりすると徐々に#name1#の力が抜けていく。

「ごめん。久しぶりなのにやりすぎた。」

#name1#の火照った顔ととろんと潤んだ目を見てジョージは申し訳なさそうに言った。

2人はここしばらくキスの1つもしていなかった。
正確にはしていたが、唇が触れ合う程度のものだった。

「ううん。気持ちよかった…」

潤んだ目でそんなことを言われてジョージの理性(元々無かったが)は崩壊した。

「いい?」
「うん」

ずっと待ってたという#name1#の言葉に、ジョージは愛おしそうに彼女の髪を撫で、頬にキスを落とした。


end