少し前の話
NAOTO'side










久しぶりに休みが取れたから、俺が二代目 J Soul Brothersに入る前から付き合いのある知り合いの家を訪ねようと車を走らせた。

忙しくて飯を食ってる時間がないときも「直人君これ好きだよね、体は大事にしなさい」とよくおばさんがご飯を差し入れしてくれたり、一人暮らしを支えてもらった方たちで。「いつもすみません」と謝れば「直人君は家族みたいなものだから、家族に遠慮はなし」と笑ってくれた。
それはもうおしどり夫婦ってこの人たちのことを言うんだなと思うくらい仲が良くて、2人の一人娘である花子ちゃんともよく遊んだ。ふにゃっとした笑顔がかわいい子。家族3人とても仲が良くてなんだろう、こういう家族っていいなっていつも思っていた。

俺がEXILEに入ってからも変わらずに芸能人とか気にせずに仲良くしてくれて、俺にとってはもう一つの家族みたいな存在で。三代目の活動が始まってからは忙しくてなかなか会えなくなってしまったけど、おじさんが「体だけは気をつけろよ」ってメールをよくくれて…。
花子ちゃんは、まだ高校生だよな…。少し前におじさんから送られてきたセーラー服を着た花子ちゃんの写真を思い出す。

そういやこの前花子ちゃん誕生日だったっけ、やべープレゼント買ってねえや…。途中で花子ちゃんの好きなお菓子でも買って行ってやろう。






見知った道を抜けて茶色の屋根の家に着いた。毎年おばさんが好きで植えているひまわりが綺麗に咲いていて、変わらないなあと目を細める。
あれ、庭には知らない車がたくさん止まっていて親戚でも来ているのであろうか。あれ…は?なんで花輪…?


急いでチャイムを鳴らせば知らない女の人がドアを開け「直人さん…ですよね、線香をあげてやってください」と言って俺を家の中に招き入れる。






線香…?





そういや線香の香りがするな…。いや、でも…そんなわけないよな?そうだよ、だって…







通された部屋には仲良く二つの写真が並んでいて、その前には線香が立っている。写真をよく見ればそれは紛れもなくおじさんとおばさんで、何が何だかわからないまま手を合わせた。







「ありがとうね来てくれて、2人からよくあなたの話聞いてたよ」





足崩してどうぞ、とお茶を出され女の人も座り話し始める。
俺以外にも何人か人がいて、おじさんとおばさんの兄弟・つまり花子ちゃんの親戚らしい。
遺産が何とかかんとか。金の話かよ・・・と考えていたら顔に出ていたのかその中の一人が咳払いをしてから俺に話しかける。





「突然よね…まだ若いのに、」


「えっと…おじさんとおばさんは…」


「うん…、心中ですって、」


「… …」






おじさんとおばさんが、心中…?は?あの仲が良かった2人が花子ちゃんを置いて??なんだよそれ、全然頭の整理が追い付かねえ。







「花子ちゃんもまさか自分の誕生日に両親をなくすなんて…」



「その…花子ちゃんは…」



「花子のことは親戚と話し合ったんだけどね…、今はまだ一人で居たいって。私たちも何とかしてやりたいんだけどね…」










ほら、経済的に…と顔を合わせあう。



んだよそれ…さっきまで金の話してたくせに。









「じゃあ俺が引き取ります、俺が花子ちゃんを育てます」








気づいたらこんなことを言っていて、言い終わった後に本人の意思とか俺が芸能人なこととかを思い出した。









『私…直人さんと一緒に行きます』







声がした方を振り向けば、おじさんから送られてきた写真と同じセーラーを服を着た、あの写真よりもぐっとやつれた花子ちゃんが居て俺の服の裾を掴む。



周りの人たちは何も言わなかった。










**********











「本当に良いの?また取りにくるんでもいいんだよ?」


『うん、これだけでいい』


「わかった、じゃあ行こうか」




家族写真とおじさんとおばさんから貰ったというクマのぬいぐるみだけを持って花子ちゃんの家を出る。
この家も近いうちに売る、




『直人さん、ありがとう…。あと、ごめんね、』


「謝んなよ、俺がこうしたいだけだから。これからよろしくね」


『はい、』







俺が絶対に花子を守るから、だからまた、いつかでいいから笑ってね。






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