少し前のお話C










突然両親が居なくなって、心にポカッと穴が空いたような感覚の中喪主として2人の葬式をなんとか終えた。

親戚のおじさんやおばさんは表面上は心配してくれてるけど、私の居ないところで心中したなんて噂してお金の話に大声を上げている。そういや結構お金あるもんなあ。にしてもみっともない。



お医者さんが言うには交通事故。
て言うかなんだよ、あの2人が私を残して心中なんて…そんなのありえないよ。





はぁ、お金の次は私の押し付け合いか……。
この中に私の本当の味方なんていないんだ。



下からあまり聞かない声が聞こえて急いで自分の部屋を出れば、直人さんが居て




「じゃあ俺が引き取ります、俺が花子ちゃんを育てます」



ああ、私にもちゃんと味方が居たんだって嬉しかった。ありがとう、直人さん。










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洋服から食器まで全部揃えてもらって、申し訳ないけどありがたい。

最初は遠慮をしていたけれど、遠慮して使わないと直人さんが寂しそうな顔をするので遠慮なく使うことにした。

それ以降も度々「似合いそうだから」「俺があげたいだけだから」といろんなものをプレゼントされる。

ありがとう直人さんでもね、私の親戚からお金貰ってるなんて嘘だってわかってるよ。それでも優しくしてくれてありがとう。




ある日直人さんがお世話になっているLDHという会社の社長さんのHIROさんって方から貰ったと作詞についての本を渡された。

両親が居なくなってから人と会うのが怖くなって学校には行かずに家で勉強をして居て少し暇だったからありがたい。


たまにご飯を食べながらそのHIROさんて人や同じグループの人の話を楽しそうにしてくれる。大好きなんだなあって、私までその人たちのことが好きになる。




そのHIROさんからいただいた本は本当に素敵な内容で、作詞に興味を持ち始めた。直人さんに直接言うのはなんだか申し訳ないなあなんて思って居たら最後のページに名刺が挟まっていて



『五十嵐広行……?ひろゆき…HIROさんか!!』




半信半疑だったけど書いてあったアドレスにメールを送れば"来ると思った"と返信が来た。
事務所の場所を教えて貰って直人さんに内緒で会えば思っていたよりも年が若くてびっくりした。社長と聞いていたからもっと年上かと思ってた……。

作詞についてとかピアノを使いたいこととかいろんな話を聞いてくれて、アドバイスをくれた。









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直人さんだけでなくHIROさんにまで気にかけて貰って、恩返しとまではいかないけどせめてくれたものだけでもちゃんと応えたいと思って作詞を始めた。

いざ始めると本に書いてあったようには上手くいかなくて、難しかったけどやってみると楽しくて熱中してしまった。






できた……。初めて自分で曲を作った。曲と言って良いのかわからないけど、それでも少し嬉しかった。





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