少し前のお話B
NAOTO'side
HIROさんに花子ちゃんのことを話したのは一緒に住み始めてから3か月くらい経ってから。
もっと早く言わないとだったのだけど、俺自身いっぱいいっぱいでなかなか時間が取れなかった。
HR「なるほどね、わかったよ。俺に協力できることがあったら言ってくれ」
「ありがとうございます!!」
HIROさんに花子ちゃんのことを話せば「大変だったな…、でも俺が直人の立場でもそうしたと思う。俺からもありがとうと言わせて」とほんと良い人に出会えたなとつくづく思う。
HR「学校はどうしてるの?」
「今は通ってないっす…その、家で勉強してます。学校行きにくいみたいで…」
HR「そっか…勉強続けてるのか。偉いね、そういう子なら新しいことをさせてみても良いんじゃないかな…。ほら、ずっと家にいるのもいろいろ考えちゃうだろうし、」
HIROさんは席を立って本棚の資料をあさり始める。何を探しているのかわからないけど、俺と花子ちゃんのことを思って何か"きっかけ"を探してくれているんだろう。本当にありがたい、俺一人じゃ…。
HR「これ…どうかな、」
「作詞…ですか」
HR「うん、この本にいろいろ書いてあって面白いと思うよ…ってまだ16歳だっけ?じゃああんまり興味も持たないか…」
「いや…でも何もないよりは、それにこれが良いきっかけになってくれるかもしれないです」
HR「そっか、良かった。もし興味を持ったようなら声かけてよ、もっといろんな資料あるからさ」
「はい、本当に…ありがとうございます!!」
**********
「ただいま〜」
『直人さんお帰りなさい、ご飯で来てますよ』
「今日は何〜?」
『今日はハンバーグです!』
「おっ!!花子ちゃんのハンバーグ美味しいから楽しみだな〜」
一緒に住むようになって初めのころは弁当を買ってくることが多かったのだけど、悪いと持ったのか花子ちゃんが作ってくれるようになった。
おばさんの味にそっくりで美味しいし好きな味だ。
「そうだこれ、HIROさんから貰ったんだけど、興味あったりしない?」
『"初めての作詞"、作詞ですか…』
「うん、作詞以外にもいろいろ書いてあるから面白いんじゃないかって、まあよかったら読んでみて」
『はい、ありがとうございます』
*********
それからしばらくして、花子ちゃんの方からHIROさんに会ってみたいと言われ、忙しいのを承知でHIROさんに頼めば快諾してくれた。
俺もついて行くと言ったけど『一人で平気です』と言われ、何を話したのかはわからなかったけど部屋から出てきた花子ちゃんの顔はどこか嬉しそうで俺まで嬉しくなった。
後日HIROさんに呼び出されて話を聞けば、俺への感謝や本の感想、そして俺や周囲への謝罪を口にしたどうだ。
そしてもう一つ、どうやら作詞に興味を持ったらしく「花子ちゃんに渡して」とたくさんの資料と鍵を一つ渡された。
どこの何の鍵かは教えてもらえなかったけど、花子ちゃんに渡せば一瞬驚いて、そのあと嬉しそうに微笑んだ。
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それからしばらくして事務所で花子ちゃんを見かけて問いただせばどうやらこの前HIROさんに渡された鍵は事務所内にあるピアノのある部屋?の鍵らしい。
でもなんで花子ちゃんが?確か花子ちゃんはピアノ習ってたって言ってたっけ。直ぐやめたらしいけど…。
『あの…私、作詞やりたいなって思いまして…』
「うん、」
『HIROさんに相談をしたら作曲も勉強してみなと言われて、それでピアノを借りてたんです…。その、黙っててごめんなさい』
そっか、花子ちゃん作詞に作曲かあ…。てかHIROさんのことだいぶ信頼してるようで良かった。やっぱり俺以外にも頼れる人がいた方が良いし。
「謝らないで、応援するよ。これからもやりたいことがあったら遠慮せずに言ってね」
『…はい!!ありがとうございます!!』
「いつか俺らにも曲書いてよ、楽しみにしてるから」
こうして花子ちゃんは作詞・作曲活動を始めた。
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