PL. A song of the beginning towards the end


(終わりへ向かう始まりの歌)



 側にいるからと
 ずっと一緒にいるからと
 そう約束したあの人は、今はもう
 
 ――朝、目が覚める度に思う。
 あぁ、まただ。また一人きりで目覚めてしまった、と。
 
(……今日は、月命日か)
 酷く暖かい夢を見ていた気がした。閉めそびれたカーテンの隙間から差し込む光が頬に静かに熱を与える。ゆったりと体を起こし暫く放心していたが、定時でかけているアラームが鳴る寸前でベッドから抜け出した。
 ココアをメーカーにセットしている間に顔を洗い、パーカーとスキニージーンズに着替える。朝食はココアにりんごが二切れと、ナッツを少量。大学時代からの友人はリスじゃないんだからと揶揄うけれど、これで充分だった。
 簡単に朝食をとった後、まだ温かなマグカップを両手に持ちベランダに出て朝の空気を吸う。立春を迎えたとは言えまだ冬の名残りはそこかしこに残っている。キリリとした寒さに思わず身を震わすと、ふと育てている植物が目に入った。
(うん、茎も葉もいい色。今年も寒かったけどよく頑張ってくれたなぁ)
 ほころびまで後少し、といったところの様々な色の蕾を見るに、開花もきっと近いのだろう。古より愛される春の訪れを告げるその花は、人間なんかよりよっぽど強く美しい。
 
 そろそろ支度をしなければ、と冷えた体を摩りながら部屋に戻る。簡単に化粧を施して防寒着を纏えば準備は完璧だ。今日届く予定の資材を受け取るためにも早めに家を出るのに越したことはない。
 ドアを施錠しスニーカーを軽く地面に打ちつけたところで、頭上から聞き慣れない囀りが降ってきた。オーソドックスな鳴き声に、鶯って本当にホケキョって鳴くんだ、なんて笑いが込み上げてくる。
 
 肌を差すような寒さにばかり気を取られてしまうけれど、春の訪れは確かにすぐそこまで来ている。飛び立つ鶯に小さく手を振り、まだ静けさが漂う街に向け足を踏み出した。



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