吐息と共にまろびでた喘ぎが闇に静かに混じり合う。
意味を成さなくなって暫く経つ母音の羅列は、いっそ溶けてしまいそうなほどの熱を孕んでいた。
「ふ、ぅあ、あっ、あっだ、めまってっ」
「貴女、ここ好きですよねぇ」
くちゅくちゅと筋に沿うようになぞられ、ぷくりと腫れた突起を嬲られる。恥ずかしいくらいにしとどに濡れたそこからは、耳を塞ぎたくなるような粘着質な水音が絶え間なく響いていて。谷間を伝う汗をなぞった薄く熱い舌がそのまま乳房の先を齧れば、面白いくらいに腰が跳ねた。
ゴリゴリと太ももに押し付けられているそれに手を伸ばそうとすれば、手首を掴まれやんわりと押し戻される。
「こら。だめですよ、まだ慣らしてないでしょう」
「いい、からっ、げんたろ」
お腹、せつないの。下腹部を撫でつつぼやけた視界の先の彼を追う。掴まれた手を取り見せつけるように指先に舌を絡めれば、舌打ちと共にギラついた視線が此方を射抜くのが分かった。
手早く避妊具を装着した手が、足を割り開く。くちゅり、と秘部に熱を押し付けられ、上擦った声が上がってしまう。
「はやく、はや、っん」
口をつく幼児のような拙い願望にもしっかりと煽られてくれたのだろう、噛み付くように唇を奪われる。
ひたりと狙いを定めた熱塊が、今度こそ焦らすことなく侵入してきた。グッと腰を押し進める度に増す中を押し広げられる感覚に背筋が粟立つ。
「ッア!?」
突如奥に感じる衝撃。そのままぐりぐりと最奥を突き上げる容赦ない注挿に身も世もなく乱れ喘ぐ。いつもなら全て挿入した後、馴染むまで待ってくれる筈なのに。
「なん、まって、ぁ、ああ、んぁっ」
首を振りながら何とか幻太郎を見やれば、エメラルドと視線が交わった。常ならばヒヤリとした理知を感じさせる瞳は、今は灼けつく様な熱情を孕んでいる。幻太郎が、わたしに、興奮してる。
その事実にすら煽られ中が不規則に締まるのが自分でも分かってしまった。
「ッ、具合、良すぎませんか」
半ばヤケクソのように腰を打ち付けられる。ごちゅん、と何かに行き止まる感覚が伝わった瞬間、目の前に火花が散った。
「〜〜ッア!ぁ、あ、あ!!」
「……へぇ」
子宮、下りてきちゃってますね。
掠れた低音でそう囁かれては駄目だった。慣らしてもいないのに。ポルチオを容赦なく突かれチカチカと視界が明滅を繰り返す。限界は、すぐそこだった。
「たろ、まって、もうぃ、イク、だめ……ッア、ぁあっ!!」
一際強く腰が跳ねる。顎を伝う涎を拭う暇もなくばちゅばちゅと打ち付けられ、悲鳴に等しい声が出た。呆気なく達した此方を嘲笑うかの様に腰の注挿は止まることなく、寧ろ激しさを増していく。
「ィっ、イッた、もういったから、ぅ゛あ゛、ま゛って、」
「小生は、まだ出してません、から」
貴女が早くって、言ったんでしょう。掠れた声と吐息が耳朶に流し込まれる。唾液と共にぬちゅりと舌を差し込まれれば、抵抗など霞と消えた。
漏れる吐息も、汗の香りも、粘膜が擦れる感覚も。彼の顎を伝ってぽとりと落ちる雫にすら煽られて、先程よりも大きな波が迫り来る。
「またイッちゃ、イク、イクッ!、あ、げんたろ、すき」
「っは、ぐ、ッ」
大きく打ち付けられた瞬間頂点に到達し、深く全身で感じいる。悦楽の濁流に呑み込まれる最中、彼もまた中で果てる感覚が伝わってきた。
びく、びくと断続的に跳ねる身体を押さえ込むようにしなやかな肢体が覆い被さってくる。苦しくて、重くて、でもそれ以上に多幸感が全身を支配していて。
ふふ、と口元は無意識に綻んでいた。
「どうやら、まだ余裕がありそうですね」
身体を持ち上げた彼から、ニコリと音が聞こえてきそうな笑みを向けられる。エメラルドには依然激情が渦巻いているのが見て取れてしまい、背筋にヒヤリとしたものが伝うのが分かった。
「げんたろ、まって、ね、休憩しよッア、」
静止の声は胸の尖りを強く摘まれた事でいとも簡単に嬌声にすり替わる。まだまだ夜は終わらない。予感が現実に変わるのも時間の問題であることは明白で、素直に喘げば思いの外優しいキスが落とされる。
月だけが知る秘事は、空が白むまで続いたのだった。