側にいるからと
ずっと一緒にいるからと
そう約束したあの人は、今は隣にいないけれど
――朝、目が覚める度に思っていた。
あぁ、まただ。また一人きりで目覚めてしまった、と。――それも、彼が現れたことで一変してしまったが。
理鶯がこうして隣で深く眠ってくれるようになってから随分経つ。身体を繋げた当初は必ず自分より早く起き、完璧な朝を提供してくれていた彼。果たして同じ人間なのだろうかと首を傾げていたことを思い出し、名前はゆるりと口元に笑みを浮かべた。
少し寝癖のついた朝焼け色を撫ぜるときらりと光る碧が目に入る。右手の薬指に嵌められたそれは、今は閉じられている理鶯の瞳と瓜二つの輝きを宿していた。
渡された時こそ左手だったが、覚悟ができるまではと右手に嵌め直してもらったのは随分前のことだ。すっかりと馴染んだ指輪を愛おしげに見つめる理鶯は心底幸せそうで、それを見るたびにどうしようもなく愛おしさが溢れるのだ。
するり、と指輪をはずす。華奢なホワイトゴールドに並ぶ6粒のダイヤモンド、中心に座すのはサンタマリアアフリカーナ。アクアマリンの王様だ。航海のお守りでもあるその石は、海そのもののゆらめきを宿していて。
……きっと、大丈夫。不意に確信に近い想いが静かに湧き上がる。何か切っ掛けがあったわけじゃない。けれどそれは、二人の想いの積み重ねがもたらしたものだということもわかっていた。アクアマリンにキスを落とし、ゆっくりと嵌めて行く。まるで最初からそこにあったかのように、左手の薬指の上、海の宝石は収まった。未だ健やかに眠る恋人の手にそっと左手を重ねる。
失うばかりだった日々を、愛で満たしてくれたあの日から――共に生きていく覚悟なんて、とうの昔に決まっていた。
さぁ、起きたらなんて声を掛けようか。まずはキスから始めよう。今はただ、この身体中をいっぱいに満たす幸福を噛み締めていたい。
私の愛しい海が目覚めるまで。