2017/02/07 Tue
君を辿る旅


『バックストリートガールズ』という漫画を読んだ。

酷い失態をしでかした若手のヤクザ三人組が、タイで全身整形と性転換手術を受けてアイドルになり、失態の埋め合わせをする、というギャグなのか闇なのかわからないストーリー。

元はヤクザだからこそ、若い女の子としての自分へ浴びせられる視線に対して、オッサンらしい反応でツッコミ入れつつ返していくのが痛快。「わかる…この気持ちすごくわかる…」と一瞬共感するんだけど、「わかるって何…?おっさんの気持ちが…?おっさんに共感…?」と我に返って、読んでて脳が忙しい。

数年前の就活のとき、パンツスーツだと取れなかった内定がスカートはくと幾つも取れた時期があって、女だからってこんなクソ寒いときにスカートはかなきゃなんねぇのか足の甲にタイツ越しに積もる雪が尋常じゃなく凍えるわファック、という気持ちだったけど、そういう「普通」という枠のレールにうまく乗れば大して頑張ってなくても頑張ったあとのような成果が出ることは山ほどある。吹雪の日に足の甲に雪積もらせてるのもすごく頑張ってることなんだけど、自分としてはそれは頑張るべきことではないような気がしていて、なのに頑張ったね偉いねよしよし、とされることが非常に腹立たしいのだと思う。そんなものが大事なのか貴様は!見損なったわ!という気持ちになるのだろう。

風俗やっていたとき、私は事前に会話ひとつせずシャワーを勝手に浴びてもらって襲ってもらうタイプの軽微なSMの店舗で働いていた。私は喋るのも得意でないしテクニカルなわけでもないから、被害者面だけしていられるその店のシステムは結構好きだったけれど、とはいえプレイが終わったら添い寝して仕事の愚痴を聞いたり相槌を打ったりすることが多かった。散々えぐい責め方をしておいて急に何なんだこれは、と思わなくもなかったけれど、それが望まれてるレールなら全力で乗るしかないなと思った。

そんなところにレールがあるのか…と驚くこともこの世には多いけれど、レールを知れば乗りやすいし合わせやすい。私には無駄に思えるレールでも、あなたがそれを大切にするなら、私はそれに乗っかるだけだ。でも面倒だから、あなたの「普通」について、四百字でまとめてから出直してきてほしい。



 


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