2017/08/21 Mon
恥ずかしくないように生きる




休日出勤、深夜まで残業、ブラックな夏のプロジェクトをこなしていたら、いつの間にか八月が終わろうとしている。久しぶりの休日は二十二時間も眠っているうちに終わっていた。眠ったらまた仕事だと思うと、眠るのが勿体無い気がする。仕事は好きだけれど、もう少し休みがあってもいいんじゃないかなと思ったりするけれど、ひたすらバイトをしていたあの頃よりは少し多めに眠れているはずだし、まだ大丈夫だろうなと思う。でも少しだけ疲れた。




昼ごはんにケーキセットを頼み、研修が終わったら花のシールがついた手紙をお世話になったひとに個人的に渡す。確かにそれは可愛いことだけれど、男がやってはいけないことだと誰が決めたんだろう。

アルバイトの男の子がそうしていたのだけれど、会社の先輩が「女々しい」「オカマなのかも」などと陰口を叩いていたのでぶん殴ってやろうかと思った。おまえよりは細やかな気遣いのできるいい子だよ。

男のひとは大変だなぁと思う。肉を食わずにケーキを頼んだっていいじゃないか。アイスティーに好きなだけガムシロップを注いだって構わないじゃないか。誰にも迷惑なんてかけていないのに。

でももしかしたら、陰口を叩くひとたちは、彼の行動が自分たちにとって迷惑なことだと本気で思って発言しているのかもしれない。自分たちの所属する場所に、ふつうではない何かがいることに耐えられないとかそういうやつ。ふつうの尺度もあんたの勝手な基準なのに、そのことが本気でわからないのかもしれない。




二年上の先輩が無茶苦茶酔っ払って、私に罵詈雑言を浴びせてきた。先輩はプロジェクトのリーダーになったこともないのに、「どうしてそんなにあなたが参加しているチームは回らないのか」「私ならもっとうまく回せるのに」等と捲し立てるものだから、耐えきれなくなって「私がサーバを作るの遅いからですよね」と綺麗に泣いてやったら、おろおろして言い訳を沢山呟いていたから気分が良かった。

その場には重役の嫁がいるのに、今日の話なんて筒抜けになってしまうのに、このひとは後輩を虐めるような図ができてしまってやばいんじゃないかなぁと思った。まさか私が泣くとは思わなかったんだろうなぁとも思った。最近はひとに「今日も遅くなるの?」と声をかけられるだけで涙が出るほど涙腺がガバガバなので、実家の犬が死んだときのことを考えるだけであっという間に泣けるから便利。

可愛くて美人なこの先輩は、私と一緒にメンターをやっているひとだけれど、ストレスを与えては教え子の蕁麻疹を酷くするばかりだったし、私が髪を切った一週間後に同じように髪を短くしてきたし、いろいろと余裕がないのかもしれない。焦らなくても先輩の方が仕事ができるんだから、もっと余裕を持てばいいのに。ほんと可愛いなぁ、唇がセクシーで最高だなぁ、胸が大きいなぁ、ダメな男と付き合うのはやめて私にしたらいいのになぁ、などと私はどうしようもないことを思っているのに、先輩はそんなことも知らずに今日も絡み酒だった。疲れてるのかな、心配だな。




なぜいまそのことばを使いたいと思っているんだろう、とか、なぜいまこれを言わなきゃ気が済まないと思っているんだろう、とか、ことばを考えるたびに思い返して、やめとくか、と立ち止まる。どうして皆そうしないのかわからない。酷いことばの理由を根掘り葉掘り聞かれたら、恥ずかしいのは自分なのに。

体を売って生きていた私よりは、誰もかれも胸を張っていられる生き方をしているんだから、他人を見下す必要なんてないのに。何かがうまくいかなくたって、その程度、後ろ指をさされて笑われるわけじゃないのに、おかしいな。



 


ALICE+