第1話

とても大きなマンションの1階。

私はインターフォンの前に20分くらい仁王立ちをしている。

『はぁぁ…』

何回目かの溜め息をついた後、私はもう一度インターフォンに手を伸ばした。

『いやぁ…、無理無理』

私、日向雪菜は今日から朝日奈家の一員になろうとしている。

朝日奈家とは、麟太郎さんの再婚相手、美和さんの息子さん達が住んでるこのマンション なのだが…。

雪菜、緊張でインターフォンがおせません。

だってさ、だってさ!?
私もう21歳ですよ?

なのに家族ができちゃうんですよ…!?

『助けて、絵麻ちゃん…』

なんて、呟いたとき

『どーしたの?』

と、穏やかな声が後から聞こえた。

『あ…、すみません。じゃまでしたか?』

『ううん。さっきからずっとここにいるから。あ、いや、見てたわけじゃなくて、すぐそこで祈織と花壇のね』

20代後半くらいの癒し系の男性は、真っ赤になりながら手をブンブンしてる。

ここの家の1人なのかな?
花壇の整理っていうことは…、マンションの持ち主?
美和さんの息子さん?

『あのー、失礼ですが』

『えっ、な、なに?』

『朝日奈さんですか?』

朝日奈と言う名前を出すと、テンパっていた男性は少し驚いてから

『うん。そうだよ』

と言って笑った。

やっぱりそうか!
チャンス到来だ!

ここはしっかり、良い第一印象を…。

『わ、私。ひにゃた雪菜…です』

噛んだ。

今、盛大に噛んだ。

『日向雪菜さん…?』

『はい、今日からよろしくお願いします』

男性はキョトンとした顔で私を見てくる。

『えーと?』

『ごめんね、僕にはなんの事だかさっぱり…』

ん?
んんん?

まさか、絵麻ちゃん。

私の事、兄弟に言ってないとかじゃあ、ないよね?

『私、絵麻の姉の…』

『えええ!?お姉さん!?』

この反応はやっぱりそうだ。

絵麻ちゃん…。
私の事、完全に忘れてたでしょ。