オーケストラ

彼が好きで仕方ない。テスト前はいつも一緒に勉強してくれて、試合に勝った時は客席にいる私を探して手を振ってくれたり、給食の後 休憩時間は一緒にお話してくれる...期待しちゃう自分が情けない。

彼は雲の上の存在で決して私なんかと付き合うレベルの男の子じゃない、芸能人とかモデルみたいな女の子じゃなきゃ 風丸君の横は似合わないもの。



「〇 考え事か?」

「ひっ、風丸君...!?」

「なんだよ」



変な顔してるな、爽やかに笑いながら登場したのは 風丸君。私の初恋だ...今日も睫毛も長いし指も綺麗だし笑顔も素敵だな...。



「ん?俺の顔になんかついてるか?」

「えっ 違う違うの...!私より睫毛長いなぁって...」

「睫毛?」



人差し指でぴんぴんと自分の睫毛を撫でると「そんなに長いかなぁ」なんて気にした様子で眉間に皺を寄せる風丸君の姿が、本当にカッコよくて 顔がほころぶ。

ふ と、視線を感じて少し遠くの席を見れば...女の子達がこちらを睨み付けるようにしてコチラを見てた。

私なんかよりも、もっともっと可愛いその子達は薄らと流行りのメイクを施して制服を可愛く気崩していた。ギャル雑誌に載ってるような そんな可愛いモデルさんみたいにキラキラ光ってるあの子達に適うわけないし...

私は 風丸君に「トイレ行ってくる...」と短く一言かけて、足早に教室を出た。



「風丸君!今度 試合に差し入れ持って行ってもいー?」「あっ ずるーい私も!」



なんて女の子達の声の後に、困ったように笑ってる風丸君の声が重なった。









その日から、私は風丸君を避けてしまってる。もう1週間くらいお話をしてない気がする...寂しいけど、フラれて大失恋なんかしちゃったらもっと辛いから 私は身の丈に合わない恋愛を捨てる為に心を鬼にした。

けど

けれども...



「お前なんで俺を無視するんだ?」



壁と風丸君にサンドされてる私、これは所謂壁ドン...!って呑気に喜んでる私ったら本当に、バカ。ユニフォーム姿の風丸君を恐る恐る見ると、凄く怒っていた。



「無視してるわけじゃ、」

「ならなんだ?」

「...えーと」



1分くらいだんまりをキメてしまった私に呆れ返ったのか、風丸君は離れて行った。遠くなっていく背中 その背中はなんだか、初めて見るものだった。

そうだよね...急に冷たくしちゃったら誰でも嫌だよね、こんな感じの空気か続いちゃうくらいなら



「当たって砕けろ...だよね」



自分の胸に手を当ててみたら、まだ 告白すらしてないのにドキドキと胸が高鳴ってた。風丸君を吸い込んだ空間を見つめて、深く深呼吸。

よし、追いかけよう...!










今日も風を味方にしたドリブルで他の部員達の間をするりするりと抜かしていく、豪炎寺に繋いだパスは華麗に炎を纏いゴールネットを貫いた。

ガッツポーズを決める俺達、いつも通りの練習をして 〇へのモヤモヤを打ち消すことにした。俺が好きなクセに 急に無視をしだすなんて、一体どうしたんだ...?他に好きなやつが出来たとか??

うーん と考えてみても俺にはさっぱり分からなかった、告白しやすいように さっきあんなシチュエーションを作ったというのに〇は黙りこくったし。

俺が告白するべきなのかとも思ったが、〇が真っ赤な顔で俺に告白する姿が見たい。可愛い姿を俺が見たいから、待ってるというのに...。



「おーい!風丸!」

「...っ!?なんだ?」



うっかりと考え事をしてしまい、ぼーっとしていたようだ。松野の居る方を見ると「ほら、あれ あれ」とベンチの方向けて指をさす。



「〇...?」



はあはあと息の上がっている〇は肩を大きく動かして息を整えている、なんだなんだと部員もマネージャーも〇を穴が開くほど見つめる。



「...っ、風丸君!」

「〇どうしたんだ?」


「私っ、風丸君の事が...すきです、つ 付き合ってください...っ!」

「ドラマかよ...」



上ずった告白の声、染岡のぽつりと呟いた言葉、周りからあがる大袈裟な声...こんなシチュエーションで告白をするなんて、お前は恥ずかしがり屋なのか大胆なのかどっちなんだよ...と笑ってしまう。〇の顔を見れば林檎みたいに赤くなってて、俺が見たかった顔だった。

大きく腕で丸を作った、少し遠くにいる彼女は それを見て口を両手でおさえた。そんな仕草に愛しさが爆発しそうで...。



「俺もお前の事ずっと好きだったよ 付き合ってくれ〇!」



彼女と俺の恋を祝福する声がまるでオーケストラの様で、土と汗臭いグラウンドが 最高にロマンティックな空間に変わってしまった。

俺は待ち望んでいた言葉と〇の表情に満たされた、このまま心臓が飛び出して ダンスでも踊ってしまうんじゃないかってくらい弾んでいる心。





20180509〔告白の日〕
⇒自爆の様な形での告白

ゆき様、初めまして riricoです。この度はリクエストありがとうございました!
ちょっと意地の悪い風丸君にしてみました、どうでしょうか?

中学生らしい当たって砕けろな告白がこれしか思い付かず、ベタな感じで申し訳ないです...。ですが 男前な風丸君は様になるのでしょうね!染岡さんの「ドラマかよ...」がいい味出しててお気に入りです。

また、お時間ある時感想聞かせて頂けると嬉しいです。今後も沢山企画していきますので 気になるものがあれば、また是非参加してください!それでは、改めましてありがとうございました!

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