星が瞬く夜に

きっかけは大谷ちゃんの些細な一言だった。



「おはよう万作君」

「おはよう 〇」



私よりもうんと背の高い彼が私の背中に触れそうな距離で一番上の下駄箱を開けた、その右下にある私の下駄箱に手を伸ばせば 二人の腕がぴとっと触れた。

「ごめん」「ごめんね」

万作君と私の謝罪の声は触れ合った腕みたいに重なる。



「あっ、◎ー万作君おはよう!」

「おはよう」「おはよう、大谷ちゃん!」

「二人とも今日も仲良いねぇ さすがカップル!」



それじゃっ、私先に行くねー!

爽やかに去っていった彼女と、取り残された気まずい私達は無言で見つめあった。



「大谷ちゃんったら、勘違いして...ごめんね万作君」

「いや 俺は嬉しい」



口をキュッと縮めて万作君は困ったように「先行くぞ」と笑った、ねえ その言葉に困っちゃうのは私なんだけど...!










よりにもよって 横の席な私達は、お互い気まずい顔して黒板を睨んだ。先生の声が左から右に 右から左に流れては どこかに消えた。さっきの言葉の意味はなんなの 万作君...。

今日の夜は木枯らし荘でマネージャーを招待して親睦会をするというのに...このままじゃ、さっきの言葉の意味を考え過ぎて ちゃんと話せないよ。



「〇!先生の授業はそんなにつまらないか...!?」

「えっ!!あ、すみません...ぼーっとしてました...」



クラスメイト達の笑い声と先生のわざとらしい大きな溜め息に恥ずかしくなり俯けば、万作君がクスリと笑って「しっかりしろよ」なんて。



「万作君のせいじゃない...」

「何か言ったか?」

「ううん、ひとりごとだよ」



退屈な授業と ドキドキ激しい心音はあまりにも真逆過ぎて、とりあえず落ち着く為にぐいーんと体を伸ばした。


チャイムが鳴って 走り去るようにトイレへと向かった、後ろから万作君の声が聞こえたが無視して逃げた。









放課後まで〇は俺から逃げるように大谷や神門の後にピッタリ張り付いて目を合わせようとしない、きっと俺が朝 〇にあんな事を言ってしまったせいだってことは分かってる。


"私も嬉しい"


そう言うだろうなと おこがましい気持ちで言った、だが...混乱させてしまったようだ。俺達は誰がどう見たって仲がいいし、付き合ってると勘違いするものだって居る。明日人なんか俺と〇が付き合ってると思い込んで 俺らが話してるとニヤッと笑うくらいだ。

お互い気持ちは分かってるのに...後一歩が足りない、まだ未熟な俺には 気の利いた告白のセリフやシチュエーションを考える事も出来ない。



「はあ...」

「あれ?万作君どうしました?」

「お、大谷か」

「ぼーっとしちゃって、◎もなんだか元気がないんです...喧嘩したとか?」

「いや、違う...大谷...頼みがあるんだ」



俺を見上げてパチパチ瞬きをすると、大谷は不思議そうな顔でこくんと頷いた。










「◎、あのね 屋上に冷えてるジュースがあるから取ってきてもらってもいい?」

「イイよー ちょっと待っててね!」

「うふふ ゆっくりでいいよ!」

「...?うん、分かった」



にやにやと悪戯っ子みたいに笑う大谷ちゃんになんだか不安な気持ちになりながらも、私は木枯らし荘にある屋上に向かった。星が綺麗にキラキラと輝いて、涼しい風で熱くなった身体を冷ました。



「〇」



背後から聞こえた万作君の声にギョッとして振り向けず、変な声が出てしまう。大谷ちゃんのあの顔の意味がわかった...は、はめられた...。



「〇、こっち向いてくれ」

「...万作君」

「朝はごめんな」

「私こそ なんか、変な空気にしちゃって...ごめん...」



ビュウッと吹いた風は私と万作君の間を通り抜けた。



「...星、けっこう出てるな」

「うん」



二人して見上げた星空には さっきと同じ様にキラキラと瞬く星達が私逹を見下ろしてる、1歩...万作君が私の方に近寄った。顔を隠すように帽子のつばを掴んでグイッと下げてる万作君。



「島で見る星の方が好きだって思ってたけど、今日の星は特別に見える」

「...そうなの?」

「〇、好きだ...」



はっと息が漏れる...急に酸素が薄くなった気がして沢山息を吸った。



「私も 好き」

「よかった...俺こんなクサイ告白しといて、フラれたらどうしようかと思ってた」



ちらりと見えた彼の頬は夜だって言うのにほんのり赤く染まってる。「ほら、戻ろう」と優しく笑う口元に "好きだ" って言われたのを思い出すと ロマンティックな気持ちが溢れ出た。




20180509〔告白の日〕
⇒照れて帽子のつばを下げながら告白

ロイ様、初めましてriricoです。この度はリクエストありがとうございました!

帽子のつばを下げながら告白なんて最高に可愛いですね...素敵シチュ感謝です!大谷ちゃんに頼んで屋上に向かわせるという 可愛らしい中学生のような告白をイメージしました、いかがだったでしょうか?

お時間ある時感想聞かせて頂けると嬉しいです!今後も企画沢山やっていくので気になるものがあればまたよろしくお願いします!それでは、改めましてありがとうございました!

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