私の王子様

 うさぎメイクにピンクのリボンでツインテール、今日もお姫様みたいに なりたくて腕に可愛いフリルを着けて制服のスカートを短く折った。王子様を見つける為には努力しなきゃいけないの、うさ耳ヘッドホンでゆめかわ曲聴きながら ドアを開けた。
 転校初日なのに、雨で 嫌んなっちゃうなぁ……折角可愛く出来たメイクも傘のせいで見えないし。あ〜あ女の子ってムズかしいよな。

「あっ」

 ただでさえ雨でイライラするのに、ドンッと誰かの胸板にぶつかってしまった。清潔な匂いがして、顔を上げたら熱苦しい感じの男の子が「ごめん! 君、大丈夫か!?」と目をぱちくりさせていた。

「大丈夫……ごめんなさい……」
「本当ごめんな! 俺考え事しててよそ見してたから……! ごめんな! 怪我してないか?」
「大丈夫でーす」

 王子様には程遠いそんな男の子とは喋ってる暇はないのです。
 あーあ、新色の可愛いチークが今のでとれちゃったかなぁ……ぶつかっちゃった男の子に会釈して足早に学校に向かった。暫く歩いてデカデカと稲妻マークが眩しい学校に到着すると、今のところ私以上に可愛い子いないと気付く。よしっ! 今日も可愛い! なんて、気合いを入れ私は校舎に足を踏み入れた。職員室に行き、私は教室に連れていかれる。

「〇◎ですっ! 皆さん宜しくお願いします!」

 きゅぴっとあざとく笑えば私の横の席の男の子がほんのり赤くなった。
 うーーん、でもね貴方は王子様って感じじゃないの! ごめんね!

〜〜〜*

 放課後。
 前の学校でもそうだったんだけど私は中途半端なギャルくさ〜い女達に呼びとめられこんな埃っぽいグラウンド近くで詰められている。「お前 その化粧きもいよ」「男に媚び売ってんじゃねえよ」 なんて口々に私を責めるけれど怖くなんてない。ただの唇オバケが話してるだけ。

「私、貴女達に何もしてないよ?」

 フンッと鼻で笑い煽ってしまったからか、腹を立てたリーダー格の女が平手打ちしてきた、ジンジンと痛む頬を抑えると生理的な涙が出た。

「トイレ行こっか」

 下手に引かれたアイラインを歪めながら汚く笑い私の胸ぐらを掴んだその時……。

「おい! やめろよ!」

 聞き覚えのある声が聞こえた。横を向くと朝会ったバンダナの男の子がサッカーボールを持って立っていた。

「なによー円堂ちょっと遊んでるだけじゃん、女の話し合いに口出さないで」
「遊んでる……って、その子泣いてるじゃないか!」
「少し男にちやほやされて調子にのってるからヤキ入れるだけ、男には関係ないから向こうでサッカーでもしときなさいよ」
「離せよ」

 男らしい手で女達から私を引き離すバンダナの彼、こんな……こんな男の子……初めて! 真っ直ぐでキラキラしてる男の子、バタバタと逃げていく女達を一瞥し私の方を向く円堂君。ドキドキって恋してるみたいに心臓が騒いでる、いや恋しちゃったのかもしれない。

「大丈夫か?」
「え、うん! ありがとぉ」
「俺、円堂守! サッカー部のキャプテンやってるんだ! 痛そ〜頬っぺた赤くなってる、冷やしに行こうぜ」

 グイッと手を引かれる。爽やかな風に似てて、でも太陽みたいな匂いがする王子様を見つけて叩かれて痛くなった頬なんて気にならないくらい気分が上がった。


20180225
→修正20210816