大人になっていく少女

桜はまだ花開いていないが、私の可愛い生徒達は満開の桜のように楽しそうに揺れていた。

先生3年間ありがとうございました、先生またね、先生ーさよならーなんて少し大人びた顔をして私の横を通り過ぎて行く生徒達。



「先生」

「おや、〇さん ご卒業おめでとうございます」

「ありがとうございました」



彼女は他の生徒とは違う目付きで私をいつも見ていた、私もその目付きを異性に対してした事がある。気付かないようにして3年間を過ごしたが、日に日に鋭くなっていく色は隠しようがなかった。



「みんなと帰らないんですか?」

「最後に先生とお話がしたくて」

「おや、それは嬉しいですね どんなお話をしましょうか」



目を細めれば彼女は照れ臭そうに目を逸らしてサッカー部の部室がある方向を指差した。



「ここじゃなんなので、部室に行きませんか...先生」

「...いいですよ」



私は告白でもされるのでしょうか。そんな有り得ない話、そう思いながら部室に入り 鍵をかければ彼女は急に「せんせい」と言いながら泣き始めてしまった。



「どうしたんですか 〇さん」

「わたし、せんせいがずっと好きでした...っ」

「おやおや 私のせいであなたを泣かせてしまったのですか」

「そうです」



うらめしそうに私を見ながら「離れたくない」と泣きじゃくる〇さん、彼女の小さな身体はあまりにも幼過ぎる。抱きしめて泣き止ますのは彼女の為にはならない、そっと取り出したハンカチを彼女の涙袋に当てた。



「〇さん ありがとう」

「せんせい」

「あなたの気持ちに答えるにはまだまだあなたは子供です」

「...はい」



特別扱いしてあげたくなるような そんな日だってありましたよ。と心の中で呟いて私は彼女の手に自分のハンカチを握らせた、きょとんと私を見つめて泣き止む〇さん。



「このハンカチを貴女に貸します」

「...はい」

「もし、貴女が大人になった時 そのハンカチを私に返したいと思ったら持ってきてください その時は必ず貴女の気持ちに答えたいと思いますので」



言葉一つ一つを理解するのに時間がかかったのか、死にそうな顔の彼女はみるみるうちに熟れた林檎のように 赤くなる。

数年後が楽しみです、そう言ってみせれば涙を拭って〇さんは笑った。



20190317