たった一度のキス

ゼロとの試合を終えて、帰る準備をしている皆に気付かれない様に私はシュウを探しに…走って走って。



「シュウ!」


「◎…?!」


「はあっ、ここにいたの!シュウ…貴方に伝えないといけない事があるの」




目をぱちぱちさせて私に歩み寄るシュウ。



「僕も 君に伝えたい事があるんだ」


「だめだめ!私が先だよ!」


「君を見てると 凄く幸せな気分になれた」


「ちょ!話聞いて!」


「今すぐ抱き締めて、キスしてしまいたいくらい 大好きだ」



先に言われてしまった!
もうっと怒ると、はははって笑うシュウ…なんで、そんな辛そうな顔してるんだろう…?



「◎、大好きなんだ」


「うん…私も、私もシュウが好きなの」



触れた指先はひんやりしてて、ぎゅっと握られた手も同様にひんやりしてる。私の手が熱いだけ?スローモーションみたいに近付くシュウの顔に私は目を閉じた。触れるだけ、触れるだけのキス。ゆっくりと離れていく 名残惜しい。



「デートとかで、ちゅうしたかったな」


「ごめんね 僕には…時間がない、」


「え?」


「いや、なんでもない ほら天馬たちが待っているよ」


「あ やば!シュウは!?」


「僕は、まだ少しここに残らないといけないんだ」


「そっかあ」



行きたくないけど、またすぐに会えるんだから!



「それじゃあね!先に行くね!」


「うん ばいばい」



走り出した私の後ろからぼそりと聞こえた声




”さようなら、元気で 愛しい君”




振り向けば そこにはきらきらと輝く光だけ、シュウの姿はなかった。







20140123