恋人じゃない君がそこに

ばったり

少しまだ夜は冷える、そんな3月末の今日。久々に見た赤い髪の毛がふわふわ風に揺れてる。SNSの誰かが君の近況をつぶやいてたから、眼鏡をかけだしたことは知っていたけど リアルに見たのは初めて。


「久しぶりだね ◎ちゃん」

「本当、久しぶりヒロト…」

「まだまだ寒いね」


困ったように笑うヒロト。
嫌という程見てきた緑の瞳、不思議な感覚に陥る。私はこの人と恋人だった。もう過去の人となってしまったのだけど。

私もヒロトも早く離れたいのに体が言うことを聞かずに、ただ お互いを見つめて立ちすくむ。

先に口を開いたのは 私だった。


「最近どう?」


SNSで大体の事は知っているけど、探ってたみたいで気持ち悪いでしょ。そんなことを思いながら ヒロトの顔を見る。


「最近は忙しかったかな」

「そっか、でも元気そうでよかった」

「◎も 元気そうでよかった」


当たり障りのない会話

離れたい気持ちと 恋人だった頃のように、手を繋ぎカフェでまったりお喋りがしたい気持ちで心と頭がグチャグチャになっていく。

俯いてしまう私にヒロトの細い指が触れた。


「ごめんね」

「いや、なに 謝ってんのよ」

「ごめん」


力なく笑って
私の頬を軽く撫でてから、じゃあまたねって私の横を通り過ぎて行った。


「ヒロト…」


理由も何も言わずに、私に別れを告げて ヒロトは去っていった。今もまた、謝罪の理由言わずに去っていった。

私をまた置いていく



まだまだ、夜は冷えるのかな。





20170331