「ねえ、君大丈夫?!」
グラウンドの近くの木にもたれかかるようにズルズルと膝をついた彼女の姿と母ちゃんの姿がダブって見えて、血の気が引いた。駆け寄ると彼女はお腹を押さえていて...どうしたの?と問いかけても返ってこない。
「保健室の先生呼んでこようか?」
「だ、大丈夫...もう少し こうしてたら、っ」
「お腹痛いの?」
「......生理なの、」
聞き慣れない単語が耳に飛び込んできた、保健体育でしか聞いたことないその単語への対応がわからなくて カッコ悪いくらいあたふたとしてしまった。
「ねえ、慌てすぎ...」
「あっそのっ ごめ...とりあえず 保健室行こうよ...!」
「立たせてくれる?」
お腹を押さえたまま俺に手を伸ばす、その手を掴んで ふらふらと足元のおぼつかない彼女の腕を引いて校舎へと入る。
学ランの袖が皺になるくらい強く掴まれている、よっぽど痛いのか 威嚇している猫みたいな声でフーフーと歯の隙間から息を出している。
「もうすぐだから」
「...ありがと、優しいね 君...サッカー部の子?」
「俺 稲森明日人、よろしく」
「こんなシチュエーションで自己紹介なんてすると思わなかった、私は◎〇...豪炎寺君と円堂君と同じクラスだったんだよ」
「円堂さんや豪炎寺さんと...!?」
保健室の目の前で大きい声が出てしまった、憧れの雷門イレブンのキャプテンとエースストライカーと同じクラスだったなんて...!
色々沢山聞きたいことはあったけど、◎さんの体調が心配だからドアを開けて二人揃って保健室に足を踏み入れた。
「あれ...?先生いないね」
「本当だ、どうしようか?」
「...ベッドに連れてって」
どきん としてしまった、青ざめた肌 虚ろな目 なにか塗ってるのか綺麗な色をした唇...初めてこんなに女の子にドキドキしてしまってる。俺、この子に恋してるんじゃ...。
「明日人くん?」
「あっ、うん...ベッドだよね」
「ぼーっとして どうしたの?」
「あはは、ごめん なんでもないよ」
ベットに座らせると◎さんはぷかっと体が浮いた、手持ち無沙汰になった俺は薬を探そうと ベッドから離れた。
「明日人君、鎮痛剤あれば ちょうだい」
「鎮痛剤...鎮痛剤、これかな...?」
「ありがとう、それだよ」
俺の手から受け取った薬を、綺麗な色の唇が飲み込んだ。そして靴を脱いでどさっと寝転ぶ ◎さん。
「俺、出るね...!」
「だめ」
「え?」
「お腹さすって」
ほら、と 俺の手を握って自分のお腹にのせた...。優しい声で 俺を見る◎さんは、俺と同い年なのに ずっと大人に見えた。
「さわ、るよ」
「うん 温かい手で摩ってくれないと 痛み引かない」
緊張で体温が上がってるだけなんだけど、◎さんは 気持ちよさそうに目を細めて俺の手のひらの温度を感じているようだ。
腕を伝って彼女のお腹に俺の心臓の鼓動が届いちゃうんじゃないかと心配になった、暫くするとスースーと寝息が聞こえてきて...。
「じ、自由すぎだよ...」
都会の女の子はみんなこんな感じなのかな、自由気ままで 大胆で 可愛らしい...初めて出会う生物だ。
20180428