熱が出た 昨晩薄着で寝ていたせいだろうか、もう5月も半ばに入りそうなのに 寒い日が悪い。喉の痛みに効きそうな プロポリスのど飴変な味に顔をしかめながら、舌の上で器用に転がす。
「おはよう 〇」
「水神矢君、おはよ」
「元気ないな 体調でも悪いのか?」
水神矢君は 自分の手の甲を私の頬にあてて、熱を測ろうとしてる。そんなこと急にされたら ドキッとするに決まってる、照れた顔を見られないように髪をいじるふりをして顔を隠す。
「熱いじゃないか 熱は?」
「昨日の夜は38あった...」
「1日くらい休んだら良かったじゃないか」
水神矢君とお昼食べる約束したからだもん、口に出したかったが 本当に心配している彼にそんな事言ったら怒られてしまう。
膝裏と裏ももを刺激する冷たい風にぶるっと体を震わせたら、水神矢君は自分の鞄からマスクの入った袋を取り出して私を自分の方に向かせて マスクをつけてくれた。
「よし、男用だから少しでかいが つけてた方がいい」
「あっ ありがとう」
「これからは 風邪ひいたらちゃんと自分に合ったやつをつけるんだぞ」
ぽんと 頭に手を乗せて水神矢君は優しく笑う、まるでお兄ちゃんのように 私を子供扱いする彼に 女として見られてないんじゃ... とショックを受けたが。女の子としては見てくれているので、今日は我慢しよう...。
▼
コンコンと激しく咳き込み出した〇は 朝に比べて明らかに体調が悪そうだ、顔半分が隠れてしまっているマスクの隙間から赤い頬が見えている。
「〇、もう帰るんだ」
「え...でもまだ、仕事が」
「駄目だ 明後日は試合だからそれまでに治してもらわないと困る」
「...でも」
合わせていた目線が揺れて 目をキュッとつむり〇は俺にもたれかかる、薄いユニフォーム越しに伝わる〇の熱。
肩をつかめば汗ばんだ肌に触れて、無茶をしていたのだと 責めそうになる。
「一人で帰れないだろ」
「帰れるよ、」
「水神矢 〇を送ってやれ」
偶然通りかかった久遠監督は俺の肩をポンと叩き、そして グランドへと向かった。視線を〇に戻すと申し訳なさそうに肩をすくませて 俺に「ごめんね」と泣きそうな目を向けた。
「ちゃんと寝て試合の日には治してくれよ」
「忙しいもんね...絶対治します」
「違う、お前が笑顔じゃないと 頑張れない」
だから 風邪を治して 笑顔見せてくれ。そう言えば、マスクを少しずらして 小さな声で「恥ずかしい事言わないでよっ」と返された。
「恥ずかしい事なんて言ってないだろう」
「...ばか」
「なんでだ?」
20180511