忘れられないよ

星章へと派遣された私達はマネージャーの仕事を忙しくこなす毎日だ。今日は春奈ちゃんが風邪で休みなので、1人でマネージャーの仕事をする。

先程久遠監督から受け取った資料をキャプテンの、水神矢君に渡す為に ウロウロとサッカー棟中を探すが...どこに行っちゃったんだろう。

話し声が聞こえて声のする方を見れば、綺麗な藍色のウェーブがかかった髪と背中に5の数字が。見つけた...!!



「水神矢君ー!」

「〇さん...!」



ぐるんと コチラを振り向いた水神矢君は相変わらずしんどそうな顔で、その向こう側には灰崎君の姿が。



「ちっ うるせーやつが来ちまった」

「灰崎君先輩にはちゃんと敬語を使いなさい!ほらほら 監督が呼んでるから早く練習に行きなさい!」

「うるせーなー」

「あーあーイイのかなー鬼道君は大人のペンギン出せるのに、誰かさんは赤ちゃんペンギンしか出せなくても...イイのかな?」


「なんでそれを...っ、次それ言ったら 犯すからな」



またまた大きく舌打ちをして、灰崎君はグラウンドに向かった。よし...!今日も挑発成功!

水神矢君を見れば 頭に人差し指をあててグリグリとしてた、頭痛いのかな。



「水神矢君、大丈夫?」

「...大丈夫です すみません 灰崎は鬼道さんと〇さんの言うことしか聞かないから...いつも迷惑を」



語尾が小さく小さくなっていく、彼はピッチに出る時とは打って変わって なよなよと眉も目尻も垂らしてはぁと深い溜息をつく。



「気にしないの、今はチームでしょ 灰崎君も2年生くらいになったら多分大丈夫だよ...時間をあげて?」

「ありがとうございます...」

「水神矢君!ほら、お姉さんがジュース買ってあげるから 元気出して!」



よしよしと少し背伸びして水神矢君の頭を撫でれば、照れた様子で「子供扱いしないでください...」と俯く。



「行こう キャプテンが居なきゃ、皆 力入らないみたいだし」

「...〇さんだけです こんなに優しくしてくれるの」

「ん?」

「好きになりそう」



ビューッと風が窓を叩いた。



「え!?」
「え、あっ...あの!」



"好きになりそう"
なんて言われるなんて思わなかったから、ぷしゅーと顔から火が出るように熱々になってしまった。彼はそんな私の顔を見て、同じように頬の色を染めていく。



「わ、忘れてください...」

「は!?」

「俺 練習行きます...!!」



水神矢君はそれはもう恐ろしい程のスピードで走って行ってしまった。



「忘れられないよ...ばか...」


「ここに居たか◎、ん?あれは水神矢か?」

「鬼道君...」

「なんでそんなに赤いんだ まさか風邪か?」



鬼道君はガミガミと私と春奈ちゃんが薄着で出歩いているからだとかなんだとか怒ってるけど、「好きになりそう」って水神矢君の言葉がエンドレスに脳みそを駆け巡っている。



20180428