太陽の王子様

「円堂君だけでも雷門に残らないの?」



アイツの少し怒ったような声が静かな部屋にポツンと姿を現した、俺達は明日から強化委員として各学校に派遣される。染岡は白恋 豪炎寺は木戸川 鬼道は星章 風丸は帝国...それぞれがバラバラになるのは悲しいな なんて言ってられない程 俺達の力は弱い。

日本のレベルを世界に押し上げるために 俺達は別々の学校でこれから過ごすんだ、マネージャー達も最初こそは反対していたが 今は同じフィールド 同じチームじゃなくったって 同じ目標の為に歩幅を揃えスタートを切ろうとしている。

そんな中 ◎は、せめて俺だけでも雷門に残ってほしいと言い出した。



「みんなで話し合っただろ?」

「私は納得なんてできない」

「俺だって 寂しいんだぞ」



へらっと おちゃらけたように笑って見せれば◎は 部室の椅子に小さく音を立てて座った、小さく溜息を吐く◎に俺の心が縮むように痛くなる。



「別に 一生みんなでサッカーできなくなるわけじゃないんだから そろそろ分かってくれよー!」

「秋ちゃんが羨ましい」

「お前は 風丸と帝国だろ」

「そうだけど」



口をつんと突き出して◎はまだ不機嫌そうな顔をする、染岡だって納得してくれたんだから と冗談っぽく言えば「染岡君はああ見えてお兄ちゃんみたいだから、白恋にいっても上手くやれるもん」なんて子どもっぽくじろっと睨んでくる◎。


どうしたらいいんだ!バンダナの下にじっとりとかいた汗をタオルで拭く、俺だって皆と離れて ◎と離れるのは辛いのに。

そんな事言えるわけなく 俺は◎と向かい合うように座ればゆっくりと長い睫毛を動かして、俺に視線を向けてくれた。



「みんなを宣伝で使うような契約だったりしたら嫌だ、みんなは悪くないのに 誹謗中傷を受けることだってあるかもしれないのに」

「周りの大人達なんて関係ない!俺達はサッカーが好きだ、同じ魂を持ってる俺達が大切に築いてきた繋がりを信じて行くんだ だから な?俺を信じろよ ◎」



肩を掴めば彼女は俺の手を上から握って 小さく「わかった、」と納得してないような 少しだけ不機嫌な声を漏らした。










「みんなさ 明日からは違う奴等とサッカーしてたりマネージャーしてるなんて、俺達も不安になるしきっと今まで応援してくれてきた人達だって不安になると思う...もしかしたら批判の言葉を投げられるかもしんないしさ...だから!お前の気持ちは分かるけど 俺達を信じてまた皆でこの部室にただいま!って 言ってやろうぜ!」



円堂君は雷門のゴールを必死に守ってくれていた大きな...とても大きくて温かな手のひらを私の頭に乗せた。まるで小さい犬でも撫でるみたいに私の頭を優しく撫でてくれる円堂君の眉がゆっくりと下がっていく 優しくて強い彼をずっと自分のものにしたいなんて 私は傲慢だろうか。



「円堂君は 永遠に、私達の..太陽でいてほしい」

「何泣きそうな顔してるんだよ、俺はお前のなんかその...檸檬みたいなオレンジみたいな!笑顔が好きなんだからさ!」

「なんでそう、恥ずかしいこと...そんな大きい声で言えるかなあ...」

「お前だって俺のこと 太陽とか言うじゃんかよ」



おかしくて笑っちゃった私達も、次第にお互いの距離感にどっと照れてしまって 人一人分スペースを空けて姿勢を直す。



「...逸れちゃったけどさ、俺はまたみんなでサッカーしたい!もっと強くなりたい!その夢を一緒に叶えてくれないか ◎」

「わかった もう何言っても、私は円堂君にはかなわないもん その代わり連絡してよね」



コツン わざわざ二人とも離れたっていうのに私は円堂君の逞しい胸板におでこを当ててみる、ほんのり体温が伝わる その感覚に私はまた泣きそうになった。

いつでも 円堂君は真正面から私達を守ってくれて、背中でみんなを引っ張ってくれた。



「おいおい 誰かきちゃうぞ、◎...なあ」

「もう少しだけ」



何か言いたげな円堂君も 流石に静かに私の頭を抱き締めた、あぁ 円堂君は私達のものなのに。なんて...子供みたいに拗ねている私を諭すように優しく掌で撫でてくれる円堂君の優しさにまた私は静かに涙を落とした。




20180903