織姫と彦星にはならない


「水神矢君ー久しぶりだね」



色鮮やかなスムージーを片手に彼女は俺に微笑む、卒業してからまだ数カ月だというのに彼女は少しだけ大人びた気がする。

梅雨が明けて もう少しで蝉が鳴き出すくらいの時期、ムシムシと暑い外とは違ってここのカフェは随分と涼しい。汗を乾かしていくエアコンの風が ◎さんの前髪を揺らした。



「お久しぶりです、高校はどうですか?」

「高校楽しいよ!もう少し帰宅部を楽しんでからまたサッカー部のマネージャーやろうかなぁって思ってる、水神矢君は元気だった?」



いつも試合は観てるけどねーと軽やかな口調で俺に問いかける◎さんの声は相変わらず可愛らしくて、喉が渇いている訳でもないのにゴクリとつばを飲み込んだ。



「この間は負けてしまいましたが...」

「でもさ、私達がいた頃は無名だった星章が今や優勝候補なんだよ?凄いと思う 頑張ってるね」



二個も上の彼女は白い歯を輝きせて俺にそんなことを言う、鬼道さんのおかげだと言いたかったがズルい俺は褒めて貰えるのが嬉しくて何も言わずに照れ笑いを浮かべた。



「そうだ、今日なんか話あるんでしょ?」



店員さんに彼女が飲んでいるものと同じスムージーを注文して席に座る。



「実は 七夕のお祭りに一緒に行って欲しいなと思って、」

「お祭り?」



彼女は大きな目をぱちくりと何度か瞬きさせてから、ふふと楽しそうに目を細め笑う。

その表情に何かおかしなことを言ってしまっただろうか?と思い「どうして笑うんですか?」と聞けば「別に 電話とかラインで済むのに、わざわざこうやってお茶に誘ってお話してくれるのが可愛くて」と返ってきた。

"可愛い"なんて、俺は男だから小っ恥ずかしいその言葉に頬が赤らんでくる。



「年に一度のチャンスだと思って 誘ったんですけど」

「...織姫と彦星じゃないんだからー、いつでも会いたい時に行ってくれたらいいのに」



真剣な顔しちゃってそんな事言われたらこっちが照れちゃうよ、なんて ほんのりと化粧をしてる顔を綺麗に緩め笑った◎さん。

コースターの上に乗せられた 綺麗なスムージーにささったストローをひとまわし、口を付ければ甘酸っぱい味が広がった。



「好きな人を誘うのは勇気がいるんですよ、なんて言ったら迷惑ですか...?」

「...え」

「織姫と彦星は会う日が決まっているので 羨ましいです」



俺は何を言ってるんだろうか

◎さんの顔は 日焼けしたのかと勘違いするくらい赤くなっている、自分の言葉に恥ずかしくなってスムージーを一気に半分飲んでしまった。



「もう、水神矢君って なんでそんなに可愛いの」

「◎さんこそ 真っ赤じゃないですか」

「うるさいなぁ」



んーっと鼻で恥ずかしさを誤魔化すような音をだして彼女はスムージーで顔を隠し「夏祭り、楽しみになってきた」なんて可愛らしい声を出した。



「行ってくれるんですか、?」

「勿論...ていうか 今日のカフェもデートだと思って来てるし、なんていうか その」

「デート...」

「私達って 両想い...なのかな?」



勘違いだったらごめん なんて眉を垂らして笑った◎さんがあまりにも可愛くて、つい 彼女の手に触れてしまった。



「...勘違いじゃないです」

「水神矢君 可愛いくせに男っぽくてズルいなぁ、私の方がお姉さんなのに」

「可愛くないって言ってるじゃないですか」



ぎゅっと掴んだ手のひらは汗で濡れている、彼女に嫌がられるかもなんて思いながらも 掴む手の力は強くなる。



「付き合うってことでいい、のかな?」

「はい 、ってその いいんですか?」

「もちろん」



彼女は 七夕祭り用の浴衣を見に行きたいと軽やかに笑う、こんなにも鬱陶しい夏も 彼女と居れば楽しくなるかもと心が踊った。



20180707〔七夕〕
年上の夢主をお祭りデートに誘う

ネコナベ様 今回もリクエスト頂きありがとうございます、遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした。(何回目だよって感じですよね...すみません...)

星章を卒業した高1夢主にしてみました、水神矢君 クリスマスまで待てずに七夕の日に!誘おう!とか考えてたら可愛いかもなんて気持ちで書いてみました。

そして、ネコナベ様 ツイッターのフォローありがとうございました。ぺちゃくちゃとお喋りなアカウントですが...仲良くして頂けると嬉しいです。

次回のリクエスト募集は12月ですが、またどうぞ 宜しくお願い致します。改めまして ありがとうございました。平成最後の夏を楽しみましょー!