ひと夏の恋を引き寄せて


りんご飴を片手に私は 迷子になってしまった、どうして...?こっちに行けば打ち上げ花火が一番良く見えると言われたのに やっぱり皆と一緒に行けばよかったかな。


心細くなって ぎゅっと胸が痛む、古ぼけた階段をとりあえず登りきろうと下駄でちょっぴり痛む足を動かして上に。

今頃みんな心配してるかも...
最後の一段を登れば 大きな音がして、いままで暗かったソコを 煌めく大きな花火が照らした。



「...綺麗、」



ドーンっと大きな音が続く、コロンコロンと石を蹴りながら柵の方へと向かうと 見覚えのある少年が夜空をじっと見つめていた。



「白竜くん、?」



小さく呟いたつもりなのに 彼の耳にはしっかりと届いていたようだ、ぐるっと私の方に首を向けた彼は心底驚いた表情を見せる。



「お前、なんでこんなところに」

「白竜君こそ...どうして?」



初めて見るラフな服装に 釘付けになってしまった、私は浴衣をひらりと揺らして彼の方に歩いていく。

柵に腰掛けていた白竜君も私の方に歩み寄る、こんな事ってあるんだ びっくりしてりんご飴を落としてしまいそうになる。



「〇 元気だったか?」

「うん 白竜君こそ元気だった?」


「ああ」



花火の音でよく聞き取れないから うんと近付いて二人して話していた、頬と唇がくっつきそうな距離に私だけがドキドキとしてしまって なんだか申し訳なくて 少し離れたら下駄が木の枝を踏んだのだろうか パキッという音の後滑って転びそうになってしまう。



「...おい、」

「あっ 白竜くん」

「ここは 暗い、俺に掴まっておくといい」



少し大人びて見える彼に うっすらと開けた唇から吐息が漏れてしまった、私の知ってる白竜君はカッコイイのにちょっぴり抜けてて変な子で いつも剣城君にあしらわれていたそんな子なのに。

いつの間にこんな、男っぽい顔ができるようになったんだろう。



「〇 どうした、体が熱いぞ」

「白竜くんが...私の事 抱いたままだから、」

「...俺の体そんなに熱いだろうか」



なんて馬鹿なんだろう と、そんな姿にもキュンとしてしまう私は白竜君に掴まって 花火を見つめた。大きな音に耳がぎゅっとするけど、私はじっと夜空を目で追いかける。



「綺麗だ」

「本当だよね 花火ってなんでこんなに綺麗なんだろう」

「いや、違う お前の事を言ったんだ」

「...え?」



ずいっと近寄ってきた顔にギョッとした、白竜君が真剣な表情で私を見ている。



「いつもは 子供っぽいと思っていたが」

「子供だもん...」

「今日は随分と綺麗だな、〇」



ふわっと香るのは 制汗スプレーの匂いだろうか、ミントっぽいガムの匂いもする。キスでもされるのかなって思い込んでしまうほど どんどん白竜君は私に顔を近付ける、恥ずかしくて顔を背ければ 顎を掴まれた。



「今日の俺はなんだかおかしい」

「いつも変だよ、」

「お前を見ていると どうしてだか、触れたくて心臓が痛くなるんだ。」



意味を理解すると同時に 花火は終わって、私達を照らすものは無くなった。暗闇に目が慣れるまでの間 白竜君は私のことをぎゅっと抱き締めて「これは 恋というやつなのだろうか?教えてくれ」なんて 初めて聞くような切ない声を出した。




20180707〔七夕〕
縁日に来た夢主が迷子になって白竜と会い一緒に花火を見る

波陽様 今回もリクエスト頂きありがとうございます、またまた遅くなってしまい大変申し訳ございませんでした...!

綺麗なお話になってるといいなぁ、と不安たっぷりですが...波陽様のおかげで白竜を書けるチャンスを頂けて嬉しいです。

次回のリクエスト募集は12月ですが、またどうぞ 宜しくお願い致します。改めまして ありがとうございました。平成最後の夏を楽しみましょー!