「僕と付き合ってください!」
…あぁ。困った。まさかこんな展開になるなんて思いも寄らない。そして自分はあんましこういった場面に免疫がないのも事実。私あなたの事タイプじゃないの。私は強い人が好きなの、ソルジャーになって出直してらっしゃい。…などとかっこよく振ってみたいものである。
しかし自分はものすごい小心者。チキンorフィッシュのチキンの方である(←ってあれはビーフか)。そんな事怖くて言えない。それにそんな事言って社内の評判が下がるのも嫌である。あの子あんな事言う子なんだってー。などと噂が広まってしまえば終わり。自分はどこでもいい子ちゃんでいたい。そしてなるべく平和に終わりたいのが一番の理由だ。…あぁ、なんて面倒くさい性格を持ってしまったんだ自分。恨むぞ自分。
「いや、あの…えーっと」
「僕じゃダメですか!?」
「え!?いやダメってゆうか…」
困ってまた視線を逸らす。なんでこの目の前の男はこんなに積極的なんだろう。逆に面倒くさい。あぁもう、どうしたらいいんだ。誰か助けてくれ。
…そう思っていたその時。
「…?」
チラリと目の前の男を覗き見ると、先ほどとは打って変わって顔が引きつっているのに気づいた。
いきなりどうしたんだろうと思っていたら、自身の肩に何かがのしかかって。そうして驚いて振り返ってそこにいた人物に、自分はもう一度驚かされる事になった。
「っレノ!?」
「よお。コイツに何か用か?」
「えっ、いやその――」
「コイツは俺の女だぞ、と。話しかけるには俺の許可が必要だ。…次は気をつけるんだな」
「っちょ!?何言うてんねん!?ウチは――」
「すっ、すいませんでした!!」
男の人は目の前の猛獣に耐えきれなくなって、その場から逃げ出してしまった。
「おまっ…そういう誤解を生むような発言をすな!!!」
「…なんだよ。逃げ出せなくて困ってたのはどこの誰だ?」
…図星。レノがニヤリと笑う。
「…いつから見とったん」
「んー?僕と付き合ってくださいってとこから」
一番最初からかよヲイ。なんだか恥ずかしくなって両手で顔を覆った。
「お前すぐ断るのかと思ったら全然断らねぇしよ。向こうのペースに呑まれそうになってるもんでつい出て来ちまった」
「だってこう…!なんてゆうか断り方がわからんかったってゆうか…」
「ああ言う時はハッキリと言った方がいいぞ、と。変に期待心持たすよりはましだろ」
「そやけどさぁ…やからってあんな嘘――」
「なんだ?嫌だったか?」
「……あーーーーウチは明日からイジメというなの拷問にあうんや…」
デマだとしても明日にはその噂が広まっている事は間違いない。あぁ、これまた面倒くさい事になってしまった。
レノはこう見えて、というか見た目通り女子社員からめちゃめちゃ人気がある。一緒に歩いていると女子社員がキャーキャー言っているのを嫌というほど聞いて来た。そして同時に自分に向けられる殺気も感じて来た。
…終わりだ。自分の命日は明日かもしれない。
「…あ?」
「女の恨みは怖いんやぞ!!!」
「何の話だよ?」
「このトンチンカン!!アンタのせいでウチの平和なライフが今日で終わってしまったやないかーい!!」
「そんな大袈裟な」
「うわぁぁーん!まだ死にたくないよーー!!」
「……」
頭を抱えて悩み出した隣の女。自分の気持ちも露知らずな彼女に、レノは大きく溜息を吐いた。