「あーーーー…」
「あーーーー…」
休憩がてら入った宿屋。窓際に突っ伏して外を眺める彼女達はいつもよりも大分テンション低めで、まるで勢いを失ったイノシシのように大人しくしゅんとしていた。生気を失ったような唸り声を上げ続ける彼女達は、まるでホラー映画のように恐ろしい。クラウドは飽きれたような溜息を吐きつつ、二人と同じように窓の外へと目を向けた。
どんよりとした空の色。窓ガラスに滴り落ちていく水滴は、まるで彼女達の心の中を表しているようだ。大地にとっては恵みのそれも、彼女たちにとっては不要なもので。
「あーーーー…」
「…その声やめろ、ユフィ」
「クラウド、暇」
「あぁ。そうだな」
「なぁクラウド、暇」
「…あぁ。そうだなって」
「あーーー暇ーーー」
「まーひーまーひー」
「……」
…何もしていないのにこんな状態の二人を見ていると疲れそうだ。クラウドはあからさまに大きな溜息を吐き、二人とは少し距離をとって腰を下ろした。
「…そんな雰囲気だと一向に止まないかもな」
「なんそれー?ウチらのせいなん?」
「アタシ雨女じゃないよ!」
「うん。見た目からしてそう思う」
「クラウドが根暗なんだよ!」
「…俺は根暗なわけじゃ、」
「っせや!!!」
「「?!」」
何かを思いついたように突然声を張り上げた彼女は、ようやくその顔を窓辺から上げた。
「てるてる坊主作ろう!」
「「…てるてる坊主?」」
ナイス提案。と言わんばかりの彼女。しかしクラウドとユフィがポカン顏なのに気づき、自身もポカンとしてしまった。
「…あれ?知らへんの?」
しゃーない、見本見せたる。と意気込んで、まだてるてる坊主の意図も原図もわからないユフィと自分を差し置き一人楽しそうにティシュを丸め出した彼女。てるてる坊主を連呼しながら曲に乗せて歌うそれはてるてる坊主の歌なのだろうか。よくわからないが、とりあえずクラウドは彼女の手元のそれの完成を待った。
「ほれ!出来た!」
じゃーんと言わんばかりに掲げられたそれは、頭は丸く首から下はヒラヒラとスカートを履いているかのような物体。マジックでちゃっかり目や口まで書かれている。
「それがてるてる坊主?」
「そ!てるてる坊主!」
「…で?何に使うんだ?」
「使うっつか、飾っとくねん!窓辺に飾って明日雨が降りませんようにってお祈りするねん!」
「へぇ〜!じゃあてるてる坊主は晴れ男なんだね!」
この真っ白でいかにも頼り無さそうな坊主が晴れ男。…そんな馬鹿な。こんな坊主が自然の摂理を変えてしまうのか。とクラウドはそれにやや不信感を抱く。
「てるてる坊主〜てる坊主〜」
「明日天気にしておくれーー」
楽しそうにそれを何個も作って窓辺に飾り出した彼女達。先ほどまでのホラーな声でなく、キャッキャと明るい声が部屋に響き出した。
「…晴れ男、か」
先ほどまでの暗い雰囲気はその坊主によって一掃されたようで。確かにそうかもしれないな。とすでに十数個並べられたそれと笑顔になった彼女達を見て、無駄に使われたティシュには悪いと思いつつもクラウドも自然とその顔に笑みを浮かべていた。