いち



きっかけは、些細な事。

たまたまその日は、違う道を歩いて帰ったから。
たまたまその日は、雨がひどかったから。
たまたまその日は、そういう気分だったから。

たまたまそれが、大好きな猫だったから。


「…あれ、おらへん」


どしゃ降りの雨の中。
段ボールの中にいた、一匹の仔猫。


「おーい!」


寒そうに震えて、とても寂しそうで。
ウチは思わず、家に連れて帰ってきてしまった。


「ロー!」


可愛らしく、でもどこか高貴な雰囲気をもつその子は、意外と人懐こくて。
ウチはすぐにその子の虜になった。


「どこいったー!ロー!」


名前はロー。
トラファルガー・ロー。


「ロー!ご飯ー!」


やたら長い名前に思うだろう。
やたら凝った名前に思うだろう。


「ったく!もう!!」


…でもこれは、ウチが付けたくて付けた名前ではない。


「…………ニャンだ」


…仔猫自身が、そう言ったのである。


「ご飯の時間になったら帰ってこいっていつも言うとるやろ!」

「うるせーニャ。どこへ行こうが俺の勝手だニャ」


ウチは、とんでもないファンタジーを拾ってしまったのかもしれない。


「……ご飯取り上げるぞ」

「…………ありがたく頂くニャ」



ネコを拾った。
ちなみにとても、口が悪い。



back