男の意識は、今だそのライフストリームの中にあった。
次第に溶けていく意識はやがてライフストリームと混ざり合い星を巡るエネルギーと化す。
…しかしその男はそれを頑なに拒んでいた。
支配しようとしていた星の源に自分が変わりうるなど、ありえないことだからだ。
男は何とかしてその場に留まろうとした。
…精神の"核"さえあれば。
それさえあれば、ライフストリームに支配される事はないのだと。
そうして男はその核を、自分を二度もこのエメラルドの中に沈めた金髪の男にしようと企てた。
…けれども、それだけでは足りなかった。
この星を破壊しうる力を持っていた彼女こそが。
その中核を成すのに、相応しいのだ、と。
――…
そして男は、ライフストリームの中にも暗闇があることに気づいた。
それは、その中に溶け込んだ者の心の漆黒の部分だった。
そして男はあることを思いつく。
…このライフストリームの中を、その漆黒の闇で覆い尽くしてやろうと。
そうして、世界そのものを漆黒の闇で埋め尽くせばいいのだと。
男はまだ諦めてなどいなかった。
この星が自分の手に落ちるまで。
彼の中で、自分という存在を生かすまでは。
それを想像すれば、嫌でも浮かぶ歓喜の念。
そして同時に、これが自分の仕業である事を彼らに知らしめたいとも思った。
その為には、自分は精神という抽象的なものではいられない。
彼らがそれを自分だとわかるように、具体化したものが必要だった。
…それにはまた、助けがいるだろう。
そして今までも、自分はそれに助けられてきたことを男は思い出していた。
それは、今は亡き者。
それは、自分の一部。
それは、自分の母親。
…ようやくそれと一つになる時がきたのだ、と。
男は、ライフストリームの中で歓喜の笑みを浮かべていた。