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 私が孤爪くんを好きになったのは高一の夏だ。
 たまたま委員会の仕事で体育館に用があって、たまたまバレー部の練習を見た時だった。

 黒髪で少し猫背で気だるげな雰囲気を出している男の子がなんとなく目について、目で追っていたらコートの中に入ると雰囲気が変わってすごくかっこよかった。汗を拭う仕草もなんだかセクシーに見えてそれから気になって仕方がなかった。

 バレー部に知り合いもいないし名前も学年も何もかもわからなくてしばらく悶々と過ごしていた時に、たまたま自販機で会って思い切って話しかけてみた。

 孤爪くんは人見知りなのか単に私が苦手なタイプなのかわからないけど、目は合わないし言葉数は少ないしでかなり緊張した。でも頑張って名前とクラスを聞いた。

 同じ学年という共通点は見つかったけどクラスも遠いし連絡先の交換は断られるのが怖くてお願いできなかった。
 でもとりあえず私のことを認識はしてもらえたし、ゆっくり仲良くなれたらいいなと思った。

 ちなみに孤爪くんは近くで見ると思ってたより肩幅もあるし私より背高いし腕とかもがっしりしてて、ちゃんと男の子だなって感じでドキドキした。
 気だるそうだけど大きな猫目はけっこう鋭くて、あの目でじっと見られたら動けなくなりそうな気がした。

 とにかく孤爪くんはやっぱりかっこよくて、ちゃんと近くで喋ったらもっと好きになった。

 でも好きになったからといって、認識してもらえたからといって特に何かあるわけでもなく。孤爪くんは休み時間はずっとゲームしているらしいし朝も放課後も部活で忙しいので全然会う機会はない。
 昼休みに自販機で会える確率は60パーセント。更に孤爪くんがその時一人でいる確率は30パーセント。私はその確率に賭けてちょっとずつ孤爪くんと交流を図っている。

 孤爪くんが誰かといる時は挨拶だけで、孤爪くんが一人の時は少しだけお話しする。ほんとに、他愛もない感じの。最近は孤爪くんがやっているスマホゲームを教えてもらって、一緒に遊べるレベルになれるように必死でやり込んでる。

「あ、孤爪くん。ゲーム結構進めたよ。瀕死状態だったけどなんとかボス倒した!」
「ボス? 何章の?」
「3章!」
「へぇ、ほんとに進めてるんだ。4章から急に難易度上がるから頑張ってね」
「えーそうなの? ここまででかなりヘトヘトなんだけど」
「ちょっと見せて、装備とか」
「えっ、わかった待ってね」

 孤爪くんが急にそんなこと言うので、孤爪くんに背を向けて急いで画面をハンカチでごしごし拭いてから渡した。

「次の章はこのキャラメインで使った方がいいよ、あと武器はこれオススメ」

 ──はああ孤爪くんが私のスマホ触ってる!!
 そんなことを思っているのは悟られないように、ふんふんと孤爪くんの言うことを聞いた。

「よかったらフレンドになる?」
「えっ!」
「嫌だったらいいけど」
「嫌じゃない、むしろありがたい! お願いします」
「……ハイ、申請しといたから」
「やったー! ありがとう孤爪くん」

 私はすぐにkzkn_5というIDからのフレンド申請を承認した。

 ──5ってなんだろ……あっ、背番号だ!

「5って孤爪くんの背番号だよね」

 そう言うと孤爪くんは少し驚いて、微かに笑ってくれた。

 ──かっこいい……何その顔! 素敵!

 私は少しずつ孤爪くんのことを知れていく感じが嬉しくて、いつも忘れないように手帳の空いているところに孤爪くんのことを書いた。

 連絡先は未だ聞けずじまいだけど、フレンドになったおかげでなんとか長い夏休みの間もゲームを開けば孤爪くんとの繋がりを感じることができて嬉しかった。

 二学期になっても相変わらず孤爪くんと会える確率は変わってなくて、大体週に2、3回の頻度で数分にも満たないやりとりを交わしていた。




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