仲いいわよねえ、アンタたち。 桐絵先輩はしみじみと言い出した。 「私だって准と仲よしだけど、一緒に、それも2人で暮らすかしら……? アンタたちは色々大変なのを、ふたりで協力して生きてるのよね」 皿を片付けながらのことだった。 パーティはつい今しがたお開きになり、みんなが手分けをして片付けている。私は皿洗いを担当していた。 「きっと暮らしぶりは玉狛のみんなと変わりませんよ」 「っていうか、もっと遊びに来なさい名前っ。さみしいじゃない。高校だって、違うところに行っちゃうし…全然会えないもの…」 「桐絵先輩…」 先輩がすねている。 どう元気付けようかと頭を悩ませていたら、京介がテーブルを拭きながら口を挟んできた。 「そうだな名前。そうしないと小南先輩が死んじゃうから」 「えっ?どういうこと?」 そう反応したのは小南先輩だ。 桐絵先輩からかいタイムの波動を感じ取り、私は口をつぐむ。 「知りませんか?寂しすぎて死んだ人間の死亡数。一昨年は500人強、去年は700人強……」 「ウソっ!? 私死んじゃう!?」 「それは……俺達にかかってますね」 「そんなのダメー! やっぱりアンタたち、こっちに転属しなさい!! 命がかかってるのよ! 私、ボスに言ってくる!」 「すみません、ウソです」 「……? へ?」 「寂しいだけじゃ人は死にませんよ」 「なっっ!!!! 騙したのね〜!!!」 思わず笑みがこぼれる。 洗ったお皿を拭く担当の栞先輩も、快活に笑っている。 「京介、名前。片付けはそこまでにして、訓練みてやる。宇佐美も付き合ってくれるか」 レイジさんだ。 「はいっ」 「教えることもないんだがな。うまくやってるようだし」 「あ、私いま、出水先輩に射手の稽古つけてもらってて」 「ああ、聞いたぞ、このまえお前に。どうだ?天才の手ほどきは」 「スペシャリストですねえ。無頓着かと思えばすっごく緻密なんです。ルーズっぽいのに、けっこうな完璧主義で、自分ではわからない私の欠けてるところ、全部言ってくれます。それがまたすごく正確で…」 廊下を歩きながらレイジさんに近況を話す。 京介は小南先輩が相手になるようだ。「とりまる!あんたぶった斬ってやるわ!」「どうぞ、望むところです」などなどと、誰か一般人が聞けば物騒にも捉えられそうな会話を交わしている。 仮想戦闘モードの一室に入ると、私たちは何戦か交え、言葉を交わしあった。 レイジさんの教示がすきだ。 私が論理より感覚で掴むタイプだとよく分かってくれた上で、マメに指導してくれる。 私の戦い方に改良を加えるアイデアをわかりやすく提示してくれて、器用なまでに射手の戦いを想定して動いてくれる。 この上なく素晴らしい師匠なのだ。 同じ訓練でも、出水先輩との訓練はしばしば心が折れそうになるけど、レイジさんとの時間は思いやりにあふれていて、居心地がいい。 「そろそろ帰る時間だな」 その一言にしぶしぶ同意して仮想戦闘室を出ると、レイジさんが宇佐美先輩に聞いた。 「こいつらを家まで送っていく。京介はまだか?」 「あ、声かけてみますね。おーいとりまるくーんこなみー」 私は一足先に廊下に出る。ふと窓を見ると、外はすっかり星が出ていた。 「寂しくて死にそうなのは京介なんじゃないかと思って」 私は訓練中、レイジさんにそう打ち明けた。そうして返ってきたレイジさんの言葉を思い出す。 「お前はそこそこひとりが好きなタイプだと思うが、京介はああみえて、賑やかなのが好きだからな」 さすがレイジさんだ。お見通しだった。 京介にとっての家族に代わる賑やかさが、どうしても埋まらない気がしていた。家族とは唯一無二の代えがたいものだ。 今日ここに来て思った。私の家で寝食するよりも、玉狛支部でみんなと賑やかにしたほうが、京介は寂しくないかもしれない。 だけどレイジさんは、首を振った。 「違う形でも、お前らだってどんなものにも代えがたいものをつくりあげてるだろ。お前がそれを信じてやれ」 なにも心配いらん。レイジさんはそう言った。 |