「ああーっ! はじめちゃってるの!?」 もう!急いで掃除終わらせたはずなのに間に合わなかったわっ! 廊下から聞こえる声だけで、誰もが分かる。 小南先輩のお出ましだ。 「みて名前! これあげる」 「うそ! かわいー!!」 「でしょーー?」 「ありがとうございます!桐絵せんぱい!」 向かいの席で、名前と小南先輩が会話に興じている。 二人は中学の時に先輩後輩だった事もあるのか、とても親しげに言葉を交わし合っていた。 「でも、なんでペアでなんですか?このマグカップ……なにか意味が?」 「名前、とりまると暮らし始めたって聞いたから」 「誰に?!?」 誰だ、そんなこと言ったの。 「迅よ? え、そうなんでしょ?」 俺は顔を横に向け、隣の席の迅さんをみつめる。 「迅さん……」 彼は笑いながら俺の肩を叩いた。 「いや〜、別に黙っておくことでもないだろ?」 「ふたりで暮らすくらいなら、もう玉狛に来なさいよ。べつにネイバー恨んでるわけでもないんでしょ」 小南先輩が不満そうにくちびるを尖らせる。 「そうなんすけどね」 エビフライを飲み込んだ迅さんは「ダメだな、」と切り出した。 「転属させんのは太刀川さんが許さない。サイドエフェクトなくてもわかるわ」 「名前、あいつに溺愛されてるもんな」 「ほほう?じんがサイドエフェクトなしにだんげんできて、レイジまでいうくらいとは……。それで、『できあい』ってなんだ?」 「陽太郎にはまだ早い」 「それも存分にあるんすけど、出水先輩たちにもあれはあれで色々お世話になってるんで…」 「ここまで良くしてもらってるのに、申し訳ないです…本当に」 俺たちは「いつもありがとうございます」と頭を下げた。 どっと笑いが起きる。 「真面目なんだからもー」 「全然それはいいんだよ。レイジさんの大事な弟子だからね。お祝いするのは当たり前だよ〜」 「あ、そういえばさ、この前言ってたやつが、レイジさんが使ってた学生鞄出てきたんだよな。京介使うだろ?」 「はい。ありがたいっす」 「だってレイジさん。良かったね」 「中学生が使うにはちょっと、と思ってたが、いまのおまえなら持っても変じゃないと思う」 帰りに渡す、忘れてたら言ってくれ。 俺はこっくりと頷いた。 |