片恋の第三者は無用に悩む

「司って梶浦さんのこと好きなの?」
盛大に昼食を喉に詰まらせた司は、激しくせきこんでからおれの方を見た。
青い目をめいっぱいに開いて「なんでわかった」って顔してるけど、その程度のことが分かるくらい一緒にいるのを忘れてるんだろうか。
司の考えていることが分からない人間の方が少ないよ。小南だっておまえの考えてることが分かってると思う。
「……悪いかよ」
司はばつが悪そうに俯いて、照れ隠しのように弁当を食べ進めた。
顔をそらしても耳が赤いのが見えるから、あんまり意味がないんじゃないかな。
「隊内恋愛非推奨組織じゃないよ、うちは」
「推奨もしてないだろ」
「平坂さんは大推奨でしょ」
「あいつは面白がってるだけだ」
「まぁ、たしかに」
平坂さんは司が自隊のオペレーターを前に、盛大にうろたえる姿を見るのが楽しいらしい。
わざと司と梶浦さんをふたりきりにしたり、梶浦さんに司の手伝いをお願いしたりとか、確信犯じゃないとできない。
「……告白しないの?」
「俺がどうするかなんて見えてるんだろ、実力派エリート」
本気の殺意が込められた目で、司はおれを見る。
みえている。
おれには司と梶浦さんがどうなって、どういう未来にたどり着くかが分かっている。
それこそ、梶浦さんと司が初めて会った時にはもう見えてた。
分岐のない平坦な一本道。びっくりするほどキレイに確定された未来なんて、久しく見たなって感動したくらい。
だからおれは困っている。
司が俺の隣でメッセージの着信に微笑むたびに、平坂さんに背中を押されて梶浦さんに歩み寄るのを見るたびに、クラスメイトの女子に「今日の髪型似合うな」ってほめながら、その向こうに梶浦さんの影を思い浮かべているのを悟る時に。
形容しがたいもやもやした感情を持て余している。
「黙るなよ、深読みするだろ」
「司の深読みなんてたかが知れてるじゃん」
「昨日はお前から3本とった」
「そういうことじゃなくて〜」
言えてしまえたらいっそ楽なんだろうけれど。
おれは今日も口をつぐんだまま、司が楽しそうに恋をしているのを眺めている。