■ ■ ■
「じゃあ、どうするの?」
ジュースに刺さってるストローをくるりと回しつついつもの屈託のない笑みを浮かべながら勘右衛門は聞いてくる。
この質問に素直な思いを返せば勘右衛門は自分の感情すら押し殺すのを厭わなくなるんだろう。それは嫌だ。それは望んではいない。
「どうもしない」
あやふやな返事を返すと、兵助は優しいなと笑われる。
違う、優しいんじゃない。純粋に怖いんだ。
「それで兵助が満足するなら、俺はそれでいいよ。満足しないならやれるだけやった方が良いと思うけどね」
「やれるだけってどのくらいのつもりだ?」
「兵助次第」
やれる云々の問題で解決するものじゃないだろ。なんて言ってもおそらく勘右衛門には伝わらない。勘右衛門は酷く優しい。それは今も昔も変わらない。だから、側にいるんじゃないのか。産まれたその日から彼女を見つけて誰より早く。過去に叶わなかった願いを抱いて。
「……俺、勘右衛門のそう言うとこ嫌いだな」
「あはは、素直」
「勘右衛門は素直じゃない」
「かもね」
今も昔も笑って誤魔化すのが得意だ。その笑顔を頼っていた俺のせいかもしれないけど。隠したその裏面に何があるかなんて悟らしてもくれなかった勘右衛門は変わらない。
「どこまで覚えてるんだ…?」
ぽつり、自分の口から言葉が溢れた。
「…………言い方が悪いけど、忍術学園の頃から進路がすっぽ抜けて兵助が死ぬまで」
「死に際は」
「見てない俺にそれ聞く?……覚えてるよ、そこら辺は全部」
はぁとため息がこぼれた。
「やっぱり勘右衛門はずるいな。それを思い出しておきながら聞くのか」
「俺からすると兵助も唯も大切に変わりないからな」
「その唯が覚えてなくても、か」
「ああ」
「……三郎は?」
「覚えている…けどゆっくり思い出しているみたいで抜けてる方が多い」
「雷蔵は?」
「ばっちり。みんなぽっかり抜けてる部分はあるみたいだけど」
あははと苦笑いを浮かべながら勘右衛門が今度みんなで会おうか、と言う。俺はそっと目を伏せた。
「……ねえ、兵助。いつまでそうやって避け続けるの?」
「分からない」
「……どうせみんな同じ学校だし少なからず会うよ。寧ろ、皆んな兵助に会いたいと思ってる。確かに、雷蔵の記憶はフラッシュバック状態で起こった。それが絶対とは限らない。彼女に記憶を戻したくないのは……理解してないけど、十分に分かったから、会おう。彼女に見られなければ良いんだ」
「そんな簡単な問題じゃないな」
死に際があれでは俺は周りに見せる顔がない。真剣に考えてくれる勘右衛門に悪いが、その提案には乗れない。逃げだと思ってくれても良い。
そっと目をそらすと勘右衛門は言い過ぎた、と口を閉ざす。
「俺はいつでも良いから俺はまたみんなで集まりたいって思ってるよ」
「皆んなって言っても八左ヱ門だけみつかってないってさっき言ったよな…?」
「どこにいるんだろうね」
探しては居るんだけどと言いながら勘右衛門が笑った。
ろくでなしの免罪符
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