01 -叶わない恋-
好きでいるのが苦しいくらい
貴方の事が好きなんです――
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何年経っても、何十年経っても…私は貴方よりも年下で。
埋められないこの年の差は、私達の距離そのもの。
いつでも一歩、距離を置いてたよね。
近付くことを許してくれなかった。
好きでいることすら…拒んだよね――。
「精ちゃんっ」
最初はご近所さん。
それからお友達。
幼馴染み。
そして今、貴方は"特別な人"──。
『彩愛』
そうやってふんわり笑う精ちゃんが好き。
何年経ったって、きっと…私の気持ちは変わらない。
"俺は彩愛を妹として見てきた。今更恋愛なんて感情は抱かない"
いつか…そう、言ったよね。
でも私はずっと前から、精ちゃんを一人の男として見てきたんだよ。
精ちゃんに"恋"、してるんだよ――。
『相変わらず気の抜けた顔してるね』
「
失礼な。口を開けば暴言だよ」
『フフ』
絶対精ちゃんは私を異性として見てないと思う。
悔しいけど、これが現実。
「すぐ子供扱いするよね」
『じゃあ…大人なんだ?』
そう言われて、ふと前髪のちょんまげを触った。
確かに、大人…とは言えない。
「精ちゃんは…セクシーな女性が好きなの?」
『冗談は部活が終わってからね』
…かわされた。
いつもそうやって軽〜くスルーしちゃうんですよね。
それが精ちゃんの得意技か。
中学を卒業して一回目の夏。
私はエスカレーター式でまたもやテニス部のマネージャーに入った。
テニス部の先輩方はこの夏、引退。
中学の頃と部活内容は同じだし、メンバーもそこまで変わらない。
ただ一つ変わる事と言えば、私の動機。
中学の時は、精ちゃんが居るから何となくテニス部に入部したけど。
今は…みんながいるから――。
少しだけでも、精ちゃん離れ出来てるのかな。
『お前さん、また相手にされんかったんか?』
「雅治先輩。近寄らないで下さい、変態」
私はこの人が苦手中の苦手で。
だって頭の中何入ってるか分かんないし。
まぁ、ちょっとだけ慣れたけど。
『変態とは酷いの。彩愛は何処でそんな言葉を学んだんや』
「
アンタからですよ、アンタから」
『失礼な。俺は真田がムッツリの変態っちゅー事しか教えとらん』
「いやいや、
貴方がその言葉に1番しっくりくると思います」
てゆうか12歳の私に変態とか言う言葉を教えるな。
雅治先輩って本当に変。
変人の王様、変態の王様。
うん、まさにソレ。
『ま、幸村はあんな奴じゃき。気長に頑張りんしゃい』
雅治先輩は私の頭をポンッと叩いた。
変な人なのに、ふと優しさを感じる瞬間がある。
それに気付いたからこそ、一緒にいれるんだと思う。
ただの変態だったら同じ空間にいるのも嫌だよ。
『彩愛、今日の昼休みは何をしていた?』
「わっ…蓮二先輩!!」
いきなり現れるんだもんな、この人。
ビックリした…。
「今日の昼休み…ですか?」
『ああ、今日の昼休みだ』
蓮二先輩、勘良すぎ。
昼休みは貴方たちのファンに呼び出されてました。
なんて死んでも言えない。
「先生に呼び出されて、職員室に居ました」
『そうか、わかった』
アレ、今日はやけに聞き分けが良い。
いつもだったら"誰とそこに行った"とか"その後何をした"とか色々聞いてくるのに。
もしかして、私の演技が上達してる?
…――
『アンタ、柳くんにチクってんじゃないわよ』
「…え?」
呼び出しにありがちな屋上。
ありきたりなシチュエーションの中から、私は抜け出せない。
『とぼけないで。昨日私達がアンタを呼び出した事、柳くんにチクったでしょ?』
「言ってませんよ」
『そうか、わかった』
あれ、ちょっと待って…?
蓮二先輩が聞き分け良かったのって…私の嘘がバレてたから?
何 故 ・・・?
「心当たりがあるような、ないような…」
『言うなって言ったよね?あたし達』
「ハイ」
『ちゃんと柳くんに訂正しといてよね』
我慢するのは、この人達の為じゃない。
こんな時に、私が揉め事を起こしたくないから。
『訂正して、さっさとテニス部やめなさい』
と、私の肩を力強く押した。
そして、尻餅をついた私を見下し、この場を立ち去った。
いい加減、飽きてくれないのかな。
入学してからずっと続いているこの無駄な時間。
いつになったら終わるんだろう。
でも、こうなる事を知っててテニス部に入ったのは私だから。
我慢するしか無い。
みんなに迷惑はかけたくないから…――。