53 -衝撃の告白-
胸が苦しい、胸が痛い…
こんな思いを
私もさせているんだ――
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(side:彩愛)
『…彩愛。俺も…好きだよ』
「え…?」
『ずっと、大好きだった…――』
ずっと頭を駆け巡る精ちゃんのあの言葉。
ホントに、私のことを…好き、なの…?
『彩愛。どーするよ?コイツ』
声のした方向を見ると、丸井先輩が風船のようにガムを膨らませていた。
「えっ?」
『えっ?じゃねーよ。何か言うことねーのかよ』
言うこと…。
丸井先輩にそう言われて、牧原先輩に言いたいことを必死に考えた。
でも…、何も出てこなかった。
「…特に、ない…」
『お前…。コイツのせいで酷い目に遭ったんだろぃ?』
「でも…それは私の意思だし」
『良いのかよ?それで』
だって、どんだけ考えたって、精ちゃんは私の恋人じゃないんだもん…。
私がただ、勝手に嫉妬してただけ。
精ちゃんは…
『俺は彩愛を妹として見てきた。今更恋なんて感情は抱かない』
私のことなんて、
何とも思ってないのに…―――
『…彩愛』
一人でコートを見つめていたら、いつの間にか後ろに蓮二先輩が立っていた。
「蓮二先輩…」
『元気がないな』
夕日で眩しそうに目を瞑っていた蓮二先輩が、目を開いた。
「今日は…ちょっと疲れただけです」
無理矢理笑顔を作って、蓮二先輩に向ける。
蓮二先輩に愛想笑いは通用しないって分かってるのに。
どうしても悟られたくなくて、無駄だと分かってても隠したくなる。
『そうか…』
きっと蓮二先輩はそんな私の気持ちまで理解して、言葉を選ぶ。
何て言ったって、開眼した蓮二先輩は無敵だからね。
この人にはどんな嘘も通用しないんだろう…。
「蓮二先輩…今日は本当にありがとうございました」
手遅れにならなくて良かった、みんなが止めてくれて良かった。
なんて無茶なことを考えたんだろうって…今になって自分が怖い。
『お前が無事で良かった』
「蓮二先輩…」
真剣な眼差しが、真っ直ぐ私に向かう。
なんだろう…いつもの蓮二先輩と違う…?
『もう、自分を傷付けるようなことはやめろ』
「ごめんなさい…。私…早くみんなに追いつきたくて焦ってたんです」
だって、蓮二先輩も景ちゃんも精ちゃんも…みんな遠すぎて…。
「ひとつしか違わないのに、私とは違う決定的な何かがあって…」
『彩愛…』
「精ちゃんに似合う女性になろうって…。でも…追いつけないんです…」
涙が溢れそうになって、私はまたコートに目線を送る。
「近付いたと思ったら、凄いスピードで離れてく…」
『…精市には、背負うものがある。テニス部、全国大会、部長…並の力では務まらないだろう』
蓮二先輩の言葉で、またひとつ…精ちゃんが遠ざかった気がした。
やっぱり私は、ただの妹分…。
『ただ…お前のこととなると、精市はいつもぶれる』
「え…?」
『考えすぎて、いつも大切な何かを見失っている』
頭の中で、精ちゃんの顔が浮かんだ。
優しそうに笑う、精ちゃんの顔…。
胸が力一杯締め付けられて…苦しい…。
「…っ…」
堪えていたのに、やっぱりダメだった。
精ちゃんのことが好き。大好き。
こんなに好きなのに…いつも上手くいかない。
私と精ちゃんは、やっぱり結ばれないのかな…?
『俺は、お前の苦しむところは見たくない』
「蓮二…先輩……」
私の涙を、手で拭い取ってくれる蓮二先輩。
やっぱり…なんかいつも違う…。
『…彩愛』
私の目線と、蓮二先輩の目線が重なり合う。
黙って私を見つめる蓮二先輩。
そして、ゆっくりと口を開いた。
『…好きだ――』