丸井 ブン太
『
おい、コノヤローアメ』
後ろから私の名前を呼ぶ彼は、丸井ブン太。
私の親友でもあり、私の妹の彼氏の兄でもある。
つまり…ブン太の弟と私の妹が付き合っていると言うこと。
My brother,My sister.
(丸井ブン太の場合)
「いきなりコノヤローって訳分かんないから」
『訳わかんねえのはこっちだっての。昨日お前の妹が俺んち来てたんだけどよ』
「あぁ、それはお邪魔しました」
『お邪魔しましたなんて言葉じゃ済まされねえっつーの』
「何?なんかやらかした?うちの妹」
『いきなり痴話喧嘩始めやがって、何時間かワーワー騒いだ後、傷付いた弟を残して帰って』
「…私に弟の敵討ちをしたいの?」
『ちげーよ!お前の妹のせいで俺の大事なお菓子を弟に取られたって言いてぇんだよ』
あぁ、だからか。
何で朝からそんなに機嫌が悪いのかと思ったら。
糖分不足ね。
「それって私の妹関係ある?
っていうか私関係ある?」
『お前の妹と俺の弟は、付き合わねぇ方が良いと思う。絶対ぇ別れさせるべきだ』
「んな無茶苦茶な。可哀想でしょ」
『
俺の方が可哀想だっつーの』
なんて言葉を超真顔で言うブン太。
食べ物の恨みは強力だな。
弟<食べ物 って感じ?
ドンマイ、ブン太弟。
君の兄が尋常じゃない事を恨め。
『てことで、取り敢えず俺にお菓子を買ってくれぃ』
「何でそうなるんだよ」
『糖分が不足し過ぎてお前に当たっても良いのかよ?』
どんな脅しだ。
まぁ確かに現段階で相当ウザイのに、このウザさがランクアップされたら私がストレス死しそうだしね。
仕方ない、今日だけ特別ね。
「じゃあ学校帰りに買ってあげるよ」
『マジ!?ひゃっほーい!今日部活ねぇんだよ、ラッキーv』
「言っとくけど、残金1000円だからね」
『平気平気☆俺安くて美味しい店知ってっし』
食べ物の事に関しては知識豊富だよね。
イラナイよ?そんな知識。
私のお財布に毒だわ。
…――
『さー、アメ!行くぜ!』
「
ちょっと待ってくれよ」
こういう時だけ行動早いんだよ。
教科書鞄に詰める時間くらいくれ。
「はぁ…」
と溜め息を吐く私の様子に気付く事も無く、ブン太は私の手を引っ張った。
「あ、ミゾレ」
校門を出た辺りで見覚えのある顔を見た。
その顔は紛れもなく、私の妹。
『お、アメ妹』
「何してるの?こんなところで」
『えっと…『
兄ちゃん!』
横を向けばブン太の弟が元気よく手を振って、駆け寄って来た。
『兄ちゃ………
っげ!』
『げ、って何なのよ』
ブン太弟と私の妹がご対面。
二人の周りには険悪な空気が舞っていた。
『お前ら、良い所に来たな。話があんだ』
『に、兄ちゃん…?』
『…単刀直入に言う。別れ「
鬼」
私がそう突っ込むと、今度は私達の周りに険悪な空気が。
『アメ…俺はなぁ…自分のお菓子は自分で食べてぇんだ』
「ブン太…私は妹が大事だから」
そして私の怒りの対象はブン太からブン太弟に。
「いくらブン太の弟だからって、私の妹泣かしたら許さないよ」
『俺が悪いんじゃねぇ!』
『アンタが悪いんでしょ!』
『お前ら俺の弟を虐めてんじゃねぇよ!』
「
アンタは誰の味方なんだよ!」
怒りの歯車が回りだした。
こうなったらもう止まらない。
ぐちゃぐちゃだよ、みんな。
『だからお前の勘違いだから!』
『違う!丸井が悪いんでしょ!?』
『俺は悪くねぇよ!』
「アンタじゃない!弟の方だ、馬鹿!」
丸井二人に天壌二人。
ややこしすぎる。
『私見たんだもん!丸井が女の子と手繋いでるところ!!』
『「
…何だとォ!?」』
『うっ…』
これは決定的。
丸井弟に痛恨の一撃。
ナイス、ミゾレ
さすが私の妹。
『それはお前が悪りぃぜ』
『に、兄ちゃん…!』
「浮気はいけないよ〜?青少年」
『天壌の姉ちゃん…!』
ブン太の弟は俯いて、悲しい顔をした。
近くで見ると結構似てるもんだな。
弟の方がちょっと目デカイか?
でも、パーツはそっくりだ。
『俺…別れたくねぇよ…』
『…丸井…』
『
ずっと天壌と繋がってたいんだよ』
『「
…ぶっ!」』
ちょ、ちょ、ちょ、…え?
繋がってたいってそうゆう意味、だよね?
『お前ら…いつの間にそんな関係に…!?』
『え?あっ…ちっ、
違ぇよ!そうゆう意味じゃねぇよ、変態!!』
変態って…、兄に似て毒舌だな…弟…。
『俺は、別れてただの同級生に戻るのが嫌なんだよ!』
『別に良いじゃねぇか』
『嫌だ!兄ちゃんは分かってない!俺が付き合うまでにどんだけ苦労したかを!!』
「苦労したんだ」
確かに、ミゾレ落とすのって大変そう…。
私が男だったら絶対に無理。
姉の私にさえ結構ガード固いもん、この子。
『だから、俺っ『
安心しろ!』…へ?』
『俺がアメと付き合ってやる!そしたらお前はアメの義理の弟になるから、間接的に兄妹になれるぜ!』
「あ、確かに……
って、ふざけるな!しかも結婚する設定ですか!?」
『良いだろぃ?可愛い弟達の為だ』
えーっと、それは弟達…ありがた迷惑なんじゃ?
しかも私の妹、なんのメリットもないし。
「本当に弟達の為?」
『…えっ…?あー…』
私がそう質問すると、ブン太は急に黙り込む。
そして私から目を反らしながらこう言った。
『それもあるけど…8割は俺の為…だったり…』
「…よし。なら付き合ってあげる」
私はブン太に微笑みかける。
ゴメンね、ブン太。
ちょっと意地悪言った。
実は私、ブン太の気持ち知ってたよ。
まぁ…クラスメイトの詐欺師に吹き込まれたわけなんだけど。
そしたらね、何だか私もブン太を見るようになって、いつの間にかブン太の事…好きになってた。
妹達みたいに付き合えたらなぁ〜って思ってたんだ。
『えっ、お姉ちゃん、丸井のお兄ちゃんの事好きだったの?』
「うん。なっかなか告白してくれないから付き合わなかったんだけど」
『わ、悪りぃ。アメが俺の事を友達として見てるなら、言わない方が良いと思ってて』
「あ、最初はただの友達だったよ?」
『え…?じゃあ何で?』
「…詐欺師が魔法をかけたから」
『なっ…アイツ…、バラしやがったのかよ』
「ま、良いじゃん。そのおかげでブン太とハッピーエンドになれたんだし」
『…だな。悔しいけど、アイツのおかげだぜ』
溜め息混じりにブン太はそう言って、私の手を握った。
『つーわけで、俺達今からデートだからv』
『うわっ、兄ちゃんずりぃ!』
「じゃあね、ミゾレ」
『お姉ちゃん…お幸せに!』
私達は手を繋いで、それを見せびらかすかのように二人の側から離れた。
その後二人に何があったのかは知らないけれど、どうやらヨリを戻したらしい。
それは…私達のおかげかな――?
丸井ブン太の場合
(弟より食べ物がストロングでした)
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