故意か事故か
『
キャァァアアア…!!』
城崎翔子の悲鳴が館内に響く。
(STAGE.20 -故意か事故か-)
『熱…ッ!』
城崎翔子は手を火傷していた。
ったく、何処まで世話かけさせられるんだよ…。
――ジュゥゥゥウ…
私はフライパンを水に漬ける。
一応火は消えたが、モクモクと厨房内に漂う煙達。
コイツ…本当に料理出来ねぇんだな…。
『どうした!?』
悲鳴を聞きつけたのか、跡部が厨房に駆け込む。
跡部に続いて、続々とメンバーが集まってきた。
「大したこと無いわ」
私は冷静にそう言った。
『そんなわけねぇだろ!この煙は何だ!?』
跡部は煙ったそうに言う。
知らねぇよ、テメェの可愛い女がやったんだよ。
私は半ば呆れて溜息を吐いた。
「フライパンに水が入っ『
景吾…ッ!!』
城崎翔子は跡部に抱きついた。
そして信じられない事を言い出した。
『大和先輩が…わざと…火を付けて…』
「は?」
泣きながら訴える城崎翔子。
そんな彼女を抱きかかえながら、跡部は私の方を睨む。
『テメェ…翔子に何の恨みがあんだよ?』
「何もしてないわよ」
恨みはあるけど…こんなとこで陰気な虐めなんてするかよ。
『ふざけんな、火傷してるじゃねぇかよ』
「知らないわよ。この子が勝手に火傷したのよ」
『酷っ…』
城崎翔子は手で涙を拭う。
おいおい、酷いのはそっちだろーが。
『跡部、取り敢えずは翔子の治療が先や』
『…チッ…そうだな』
城崎翔子と忍足を別室に移し、私達は食堂に集まる。
『何なんッスか?』
『さぁな』
事情を知らない赤也とジャッカルが、この重い空気の中ヒソヒソと話していた。
『
なんや、この重たい空気!』
『しっ!金ちゃん、静かに』
金太は相変わらず空気の読めない奴で、大声でそう叫ぶ。
そしてそれを白石が注意する。
いつものパターンだった。
『なぁ跡部。どうすんだよ?夕食』
『今日は仕方ねぇから、専属のシェフを呼んだ』
『マジかよ。合宿なのに随分リッチだな』
一方、向日と跡部はこんな話をしていた。
そして話し終えると、再び私の方を睨む跡部。
『言ったよな?翔子に何かしたら許さねぇって』
「えぇ、私も言ったわよ。何もしないって」
『してんじゃねぇか』
「だから、してないわよ」
何でこんなに怒られなきゃいけないのか。
城崎翔子が何だって言うんだよ。
『この女、翔子の事妬んでんじゃねぇの?』
向日が頬杖をついてそう言った。
妬んでる…?
あんな女、妬ましくも何でも無いんだけど。
『あの…話が読めないんスけど、何かあったんッスか?』
桃城が手を挙げて質問する。
『コイツがわざと火付けて、翔子に怪我を負わしたんだとよ』
『えっ…』
『人として最低ですね』
宍戸と鳳のダブルリンチ。
人として最低なんて…お前に言われたくねぇよ。
『そうなん、ッスか』
桃城…いや、青学の奴ら全員が私の事を見ている。
その目は、氷帝の奴らと同じ色だった。
もしかしてコイツら…本当に私がやったと思ってんのかよ…?
『と、とにかく、謝れば良いんじゃないかな?』
大石が私にそう言った。
謝る…?
誰が?誰に?
適当な事言ってんじゃねぇよ。
「嫌…」
『え?』
「私がやったんじゃない。
だから謝らない」
『
テメェ、まだそんな事言ってんのかよ!』
私の言葉に向日が声を荒げる。
そんな事したって、私は謝らねぇよ。
絶対に負けねぇ。
『ちょっと良いッスかー』
今度は赤也が手を挙げる。
『明奈先輩はそんな陰気な事する人じゃねぇし、明奈先輩がやってないって言ってんだから、やってないんッスよ。一体何人で明奈先輩のこと責めてんッスか』
赤也は跡部の方を睨む。
今、
コイツのことをちょっとカッコイイって思った。
みんなが私を責めてる中、自分の意見を言えたコイツが。
『せやな、明奈は自分が悪い思たら、きちんとごめんなさい出来る奴やで?』
赤也に続いて、謙也が発言する。
お前ら…そんな事言われたら惚れちゃうぜ?
『
ってことで、会議終了。腹減ったんだ、何か食わせろぃ』
と言ったのは勿論丸井で。
お前は私より食を選ぶのかよ。
――いや、違うよな。
お前も私の事を信じてくれてんだろ?
みんなだって…。
それが、仲間ってやつだよな。
何だか心底嬉しがってる私が居た。
ありがとな、みんな。
――ガチャ…
その時、戸が開いて、忍足と城崎翔子が入ってきた。
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