私は戦う


[明奈side]



城崎は私を睨み付け、気に入らないような顔をする。

そんな醜い主人公はいらない。

だから、最後に笑うのは…"私達"――。
















(STAGE.19 -私は戦う-)












『ハッ、強がってられるのも今の内よ』



私達の中に優奈って意味も含めて言ったんだけど…この女は気付いていないみたいだった。

アンタにとって、優奈は…眼中に無いって事…?












『ごめんなさい、遅れました…!』



私達はドリンクを持ってコートに入った。

遅れたのはアンタが何も手伝ってくれなかったからだろ。



『しかし4校分となると、結構な量あるんッスねー』

『手が足りなかったら僕達も手伝うよ』



青学の桃城、不二がそう言ってきた。

一応青学の事も調べておいた。

奴らは正義感が強い。

どうやら私の敵にはならなくて済むようだ。



『ケンヤ、お前には負けへんで』

『ユーシ…。生憎、こっちにも何が何でも負けられへん理由があるもんでな』



忍足と謙也が親しそうに話している。

そう言えば、忍足も関西弁だよな。

昔の友達とか何かか?



『明奈』

「おっ、柳」

『城崎翔子について調べたんだが』

「…えっ…?」



ホント、お見事って単語しか出てこねぇよ…お前には。

本当の黒幕は城崎翔子。

それを確信させられたのはついさっき、"城崎翔子物語"を聞いた時。

だからその事実は私しか知らない筈なのに。

柳は城崎翔子に目を付けていたなんて…。




『割と社会では名が知られているみたいだ』

「それって…」

『城崎翔子は城崎財閥の娘』

「やっぱり…だからあんなデカイ顔が出来んだな…」



まぁ、考えてもみろよ。

あのお金持ちが通う学校だぜ?

そんな奴が居てもおかしくはねぇよな。



『だがしかし、北川財閥の力を使えばねじ伏せる事は出来る』

「ねじ伏せる…?」

『財力の大きさは、北川財閥の方が遙かに上だ』



それってつまり…私がお父さんに頼んで城崎財閥を潰して、それで城崎翔子に謝罪させろって…そう言いたいわけか?

確かに…それが一番手っ取り早いのかもしれねぇけど…。



「そんな卑怯な手は使いたくねぇよ」

『明奈…』

「それって結局は私の力じゃなくて、親の力だし。それじゃ、あの腐った男とやってること変わらないだろ?…何より…私の為に頑張るって言ってくれてる、アイツらに悪りぃよ」

『フッ…』



柳は静かに笑う。

そしてこう言った。



『そう言うだろうと思っていた』





お見通しってわけかよ。

つーか、私にそんな事出来る権利はねぇって…分かってんだろ?

私は四年前に家を出たんだ。

もう…北川財閥の一員なんかじゃねぇんだよ。



『明奈、此処ではお前は独りでは無い。辛い時は、俺達を頼れば良い』

「あぁ、サンキュー」



でも…ごめんな、柳。

私はお前らには、頼れねぇよ。

四天宝寺の奴らも、立海の奴らも…みんな大好きだから。

お前らを巻き込むことなんて、本当は許されねぇんだ。

もし何かあったら、って思うと…恐くて堪らねぇ。


傷付けたくねぇんだ、お前らを。










『お姉ちゃん』








私は一人で大丈夫。


だって、優奈も一人で

戦って来たんだもんな…――。














『よしっ、今日は上がりだ!』



跡部の声がコートに響く。

この後、私達雑用係(マネージャー)以外は、部屋で休憩。

その間に私達が夕食を作る。

そうゆうスケジュールになっていた。



『夕食、私作れないのよねぇ』



城崎翔子はそう呟いた。

この金持ちお嬢様め。

いつもいつも召使い達がやってくれるんだもんな。

自分の世話も出来ない奴が、マネージャーなんてやってんじゃねぇよ。



「やるしか無いでしょ。来なさい」



私達は厨房に移動した。

私は鍋、包丁、まな板など、調理に必要な物を用意する。



「材料は?」

『冷蔵庫の中に全部入ってるって言ってたわよ』



冷蔵庫を開けると、凄い品数の食品達が眠っていた。

どれもこれも高級そうな食材達だ。



「取り敢えず…肉だな」



スタミナ付けなきゃ動けねぇもんな。

私は肉を城崎翔子に渡す。



「これ、焼いて」

『は?何で私』

「それくらいならできるでしょ。野菜は私がするから」



と、私は野菜を取り出す。

そしてそれらを洗い、手際良く切っていく。

一人暮らししてたからな。

料理には結構自信あるんだぜ。



『…仕方ないわね』



私のを見て、やる気が出たんだろうか。

城崎翔子はフライパンを取り出した。

そしてコンロに火を付ける。



「暑い…」



火を付けた事によって厨房の温度が上がり、じわじわと汗が滲む。

私はコップに水を入れ、それを飲み干す。



「アンタも水分補給ぐらいしときなさいよ」



と、城崎翔子にも水を差し出す。

その時…何やら焦げた匂いが…。



キャッ、貼り付いた…!

「アンタ…油敷いた?」

『知らないわよ、そんなの!』



城崎翔子は油を取って、フライパンにかける。



「ばっ…そんなに入れなくても良いの!」

『えっ…!?』



と、城崎翔子が油を置いた瞬間…













――ボォォォオオオ…!!



置いてあった水がフライパンの中に入り、火が燃え上がった。

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