家族の絆
確かに、私は何年かぶりに再会した跡部に、惹かれていった。
でも好きだとは言っていない。
跡部には、初恋の相手だったと…告白っぽい事はされた。
でも好きだとは言われていない。
…白黒付けろよ、男なら。
(STAGE.50 -家族の絆-)
『景吾、私に感謝してよね』
『アァン?』
『お姉ちゃんが北川家の跡取りだったら、景吾は婿入りしなきゃいけなかったんだよ?うちは代々婿入りが結婚の条件だからね』
いやいやいや、そもそも結婚とか気が早いだろ。
じゃなくて、だから私は跡部とは付き合ってな
『北川家と契約して、合併しても良かったがな』
『あ、それ良い案!私が跡取りになったら是非お願いします!』
おい、ちょっと。
何楽しんでんだよ優奈…。
「………」
ま、いっか。
こんな楽しそうな優奈の顔を見るのは、久しぶりだからな。
それに免じて、許してやるよ。
『――明奈、優奈…!!』
「えっ…」
『お父さん…お母さん…』
何で二人が此処に…。
思わず跡部の顔を見ると、奴は微笑んでいた。
『俺が呼んでおいた』
やっぱりか…見る限り優奈も驚いてっから、優奈ではないと思ったぜ。
この二人を呼んだってことは、そろそろ和解しろって…そうゆうことなんだろ?跡部…。
『明奈…ごめんなさい…ッ!』
「お母さん…なんで謝るんだよ…?」
私の両手を、お母さんの両手が包み込む。
暖かくて優しい…母親の温もり。
『親でありながら、貴方にこんなことをさせるなんて…』
「違う、私が勝手に決めたことなんだ!お母さんは何一つ悪くなんてねーよ!」
『いいえ…私が止めるべきだったの。そしたら貴方も、こんな傷を付けずにすんだのに…』
「止めたってきっと、私はコイツらに復讐してた。復讐が悪いことか良いことか、そんなの分かんねぇけど…私が決めたことに黙って背中を押してくれた…!一度は家を出た私を応援してくれたこと…感謝してるんだ、本当に」
いつも危なっかしい私を、遠くから見守ってくれてた。
出て行けって言いながらも、私のことを気にしてくれてた。
私は誰よりも親の愛を…感じ取ってたよ…。
「この復讐が終わったら、北川家とは関わらないでおこうと思った…」
『明奈…』
『お姉ちゃん…』
「でも…ッ…!やっぱり私は…北川明奈で居たいんだ…」
私は泣いた。
お母さんも泣いた。
優奈も…滅多に泣かないお父さんでさえも、ハンカチを目に押し当てている。
和解の涙は、家族全員の頬を塗らした。
『貴方は、私達の…大切な娘だから…』
「――ッ、うん…ッ…
ありがとうっ……!」
久しぶりに家族4人が集合した気がする。
バラバラだったピースが全て揃った。
私達は、4人でひとつなんだからな――
『連絡ありがとう、跡部くん…』
『…いえ。僕達も、あなた方にお話があったので』
跡部がチラッとアイコンタクトを送ると、集合する氷帝軍団。
そして全員で、床に膝を付く。
『な、何を…』
「オイオイ…」
『
本当に、申し訳ありませんでした…ッ!』
きっとこの先一生見ることのない、レギュラー全員の土下座。
跡部なんて特に土下座とはかけ離れた人間だろうに…。
『あっ、跡部くん…皆さん…!頭を上げてください!』
『そ、そうだよ!みんなだけのせいじゃないから!』
『俺達は大切な娘さんを傷付けてしまいました。もう二度と…こんな間違いは起こしません』
誠心誠意謝るメンバー…一人足りねぇけどな。
つーか寧ろアイツが一番謝れって話だ。
『もう、良いんです…。明奈が居て、優奈が居て…家族全員で笑い合える。私達が忘れていたそんな当たり前の幸せに、気付かせてくれたのですから…』
お父さんは灰色の目を輝かせて、ニッコリと笑った。
見たこともないくらいに晴れ晴れしていて。
何だか若返ったみたいだった。
「っつーか、アイツは何処に居るんだよ?」
『翔子か…そういや見当たらねぇな…』
おいおいおい…あんな女野放しにしてて良いのかよ?
まぁ、何かあっても私がぶっ飛ばすから良いけどな。
『城崎グループ…あそこを野放しにしていては危ないと、近々感じていました』
『そうですね。恐らく…潰すなら今です』
『…手を貸していただけますか?』
『勿論です。俺も、色んなところに協力をお願いしてみます』
跡部も、跡取りのくせに顔は広いみてーだな。
コイツに性格以外で欠点があったら教えて欲しいぜ、まったく。
『お父さん…翔子はどうなるの…?』
『え?』
『城崎グループを潰したら、翔子は…』
『…わかったよ、優奈。城崎を私の部下として働かせることにするよ』
『お父さん…。ありがとう!』
別にそのままほっときゃ良いだろーに。
ま、仮にも優奈は友達だったみたいだからな…ほっとけない気持ちも分からないでもないけど。
『にしても、翔子から目ぇ離してええんか?』
『すぐにでも捜索しねぇとな』
『こーゆう時って…大抵思い出深いとこに行くんちゃう?』
まぁ…全部終わっちまったもんな…アイツにとって。
だけど思い出深いって…そんな人間らしい奴なのか?アイツは。
『ジロー先輩……』
『ん?』
『ジロー先輩なら分かる!』
優奈の言葉に、みんなの視線は芥川に集まった。
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